■権威主義・虚礼重視 / 自己相対化能力
若造 だけど少なくとも、そういう優秀な人間をある程度厚遇する必要があるし、そのような人間のアイデアを生かす工夫をしなければ、待遇平等主義のままでは優秀な人間は会社から離れていってしまうだろうね。だから、あくまで悪平等主義は過去のものになったと考える必要があるんじゃないのかな。
それと同様に、「会社のトップに近い」というトラの威を借る上司の権威主義もなんとかしてもらいたいと思うね。
旧日本人はお得意の仲間意識を発揮して、同期の人間も仲良く出世させるから、だれがどう見ても「無能だ」とわかっている人間も昇進させて管理職にしちゃってたでしょう。しかも「役職者には役職者なりの待遇をさせなければならない」と、法人カードとか、ゴルフ会員権とか、ムダな交際費とか、フリンジ・ベネフィットに余計なコストをかける。あれはやめてほしい。それによって、本人が「自分には実力があるかもしれない」と勘違いするのは、部下にとって大変な迷惑だ。自分の能力を客観的に見つめてほしいのに、
おやじ そりゃムリだよ。それこそが出世のあかしであり、会社に忠誠を誓う理由なんだから、簡単になくなるはずがないよ。社外とのつき合いのために必要だということもあるし。ビジネスの世界では、メンツとか体面というのは非常に大切なもんだ。だからそれを保つためのコストを会社が負担するのは当然だろう。
それは会社同士のつき合いということだからね。別に行きたくてクラブで飲んでいるわけでなし、ゴルフに行っているわけじゃないんだ。
若造 じゃあ、行かなければいいじゃない。余計なコスト負担をするのは消費者なんだから。
それで、よく「オレは聞いていない」とか、「オレの顔をつぶした」と言って怒っている旧日本人の管理職がいるけれど、大抵の場合は、その人に話す必要がないから話していないだけなんだよね。だけど、そこで「メンツが立たない」と言って怒っているわけだ。
おやじ 当たり前じゃないか。管理職は体制側なんだから、「現体制を維持するためには自分がこの会社の秩序の中に組み込まれていなければならない、だからオレを素通りするのはとんでもないことだ」ということなんだ。管理職の意見は、組織の意思とイコールなんだから。管理職の意見と、組織の価値観は一致しているんだ。
若造 すごい勘違いだよ。まともな会社なら、「旧日本人の理屈は本流ではない」ということに気づかないと。まあそこに気がついたら最後だから、気がつかないふりをしているだけかもしれないけれど。
結局、旧日本人は、自分を組織全体と同化して考えることで、自分の能力や役割を客観視する「自己相対化能力」がさっぱり無くなってしまっているということなんだと思うよ。そういう人は、「自分の役割は何なのか」が理解できない。そういう人に限って、大きな声を出して自分の意思を通そうとしがちだし、自分がまちがっていたとしても目下の者の意見を聞くことはないし……。