■権威主義・虚礼重視 / 自己相対化能力2
若造 結局、旧日本人は、自分を組織全体と同化して考えることで、自分の能力や役割を客観視する「自己相対化能力」がさっぱり無くなってしまっているということなんだと思うよ。そういう人は、「自分の役割は何なのか」が理解できない。そういう人に限って、大きな声を出して自分の意思を通そうとしがちだし、自分がまちがっていたとしても目下の者の意見を聞くことはないし……。
おやじ まあ、自分を飛び越えたり、自分を否定するような不逞の輩がいては、秩序が乱れてしまうからな。
若造 それどころか、目下のものに対しては、「自分はオールマイティーで、仕事の範囲については何でも知っているし、失敗はカバーできるし、自分の方がどうにも優れているはずだ」と思い込んでいる。
おやじ 実際にそうなんじゃないのか?
若造 実際にそうでない上司に限って、そう思っているから困るんだよ。それで本人がやってる仕事というのは、非常にレベルが低かったりするんだけれど、「部下の手柄は横取りして当然だ」と思っているんだから、どうにも始末がつけられない。
おやじ そういう人間にも、会社の中に居場所は必要なんだから、あたたかく受け容れてやれよ。
若造 そういう人は、クビにできないのなら会社に居てもらってもいいけれど、もう少し小さい顔をしててもらいたいんだけど。
ところがこれが、人より声が大きくって、おまけに会社にいるのが大好きで部下と飲みに行かない時は残業しているから、部下がなかなか帰れないんだよな。
おやじ なんか、オレ自身の話を聞かされているみたいだな。
若造 「どうしてそこまで会社が好きなのかな」と思うよ。家にいたら、奥さんに追い出されて、居場所がないから会社に来てるだけのような感じがするね。それに会社に勤めていれば、「○○会社の○○です」と名乗ることができるし。飲み会に行っても、「わが社では……」と、自分の意見と会社の見解をごちゃ混ぜにして話しているし。
おやじ ますます、オレの話みたいだなあ。
若造 「会社から切り離されたら、この人はいったいどうなっちゃうんだろう?」と思っちゃうよ。
おやじ それだけは勘弁してくれえ。