■下司根性 / パートナーシップを組む
おやじ それはずいぶん自分勝手でわがまま考え方じゃないか。さっきまで人のためにとか、社会のためにと言っていたのに、全然矛盾してるだろう。
若造 どう説明したらいいのかな。ぼくらの価値観に基づいた行動は旧日本人から見ると、わがままで利己的に見えるみたいだね。だけどぼくらは、「まず自分の能力を活かせなければ社会参加はできない」ということのほうが前提なんだよ。
旧日本人にとっては、「自分の能力が生かせるか活かせないか」はまったく問題ではなくて、「結果平等を受け入れるかどうか」だけが問題なんだよね。それで自分たちが想定している結果平等の範囲の中に入らない人間は妬んだり嫉んだりして排斥してしまう。それは、結局「自分たちの仲間に入るかどうか」を問題にしているわけであって、「社会のためになるのなら、才能を活かしてやろう」という公共心とは関係がないことだよ。
他人と自分とは、違っていて当然なんだから。相手がどんなに金を持っていようと恵まれていようと、妬む必要なんか全然ないじゃない。目の前の相手を見極めて、相手ができる以上のことを望んでもしょうがないし、こちらの希望を向こうが満たせないのであれば、違うパートナーを見つければいいだけで、ひたすら自分と同じような境遇の相手を探すのは意味がないことだと思うよ。
本音は、自分たちが支配できるような便利な関係の相手を探してるだけなんじゃないのかな。旧日本人にはそういう臆病な対人関係の結び方しかできないってことなんじゃないの。
おやじ 何を言ってるのかさっぱりわからんなぁ。結局お前たちは力がないから、「自分たちがもっと権限を持てるようにするために改革をしたい」と主張しているだけなんだろう。
「改革」の美名の下に新しい考え方や、方法を組織に持ち込んでくる奴というのは、結局は自分の利益しか考えていないのに、大義名分として「みんなのために、こうした方がよい」と言っているだけの利己主義者なんだ。だって今までのやり方を否定しても、よくなるという保証なんかまったくないじゃないか。そうは問屋が下ろさないぞ。
人間というのは、自分がかわいい。自分のことを考えて自己中心的に行動するものなんだよ。人の善意というのは美しいが、それを信頼してバカを見るのは誰でも嫌だ。
若造 「若いものは純粋だから人の善意を信じるが、世の中が分かった大人は違う」というレベルの話をしているんじゃないんだよ。「もし全員が利己的に行動したら、社会は成り立たない」ということを認識しているかどうか。その認識がないとすると、その人こそ確信犯で利己的に行動できる人なんだよね。
そういう人の頭の中身を分析してみると、
まず、自分は自分の利益しか考えずに物事を判断して行動している。
そしてまた、「人間というのは、だいたい自分と同じようなものの考え方をするだろう」と漠然と考えている。
だから「世の中の人間は全員自分勝手にわがままに行動している」という結論になる。