船が沈む責任はすべて設計者にあるのか
飯坂 金融危機は、起こるべくして起こった人災なのかもしれませんが、根拠が違っているのではないでしょうか。まあ、今さらそんなことを言ってもあんまり意味をなさない事態に至っているのだと思いますが。
現在の危機に関し、悪いのは金融工学を悪用した人たちで、金融工学自体は悪くないという論評をする研究者がいる。しかし物質が絡んだ自然科学や工学の世界では、こうした発言はありえない。
とのことですが、原子爆弾ができたから、核物理学はギルティなのかと言われたら、どうなんでしょうね?
運営者 学問は、価値判断を排除している世界なのだから、こういう立論はないんじゃないのかな。関係ないでしょう。そういうのは物事の基本じゃないですか。
飯坂 価値を判断するのは政治の世界ですからね。
どうも僕は、この論文は高安さんに新聞記者がインタビューして、それを起こしたんじゃないかと思うんですよね。そうでないとおかしな点が多すぎます。
運営者 まあね、この人だって東北大学から、ソニーの研究所の看板で雇われてるわけでしょう。何か実績がないとヤバイわけですよ。そういう意味では、日経の経済教室というのはとってもおいしいですからね。そしたら多少はサービス精神が出ようってもんじゃないですか。
飯坂 例えば、船団が嵐で沈んだ大事件が発生したとして、そのとき「悪いのはその船に直接関与した人たちで、船舶工学は間違っていない」と開き直る研究者は恐らくいないはずだ。
でも今回の金融危機は、船の操縦法が間違っていたから船団が沈んだんだという言い方もできるのではないかと思います。台風が来ているのに無理に港を出てしまったとか、船の積載容量を超えて積み荷を積んでしまったとか、積み荷の固定がいい加減で途中で荷崩れを起こしてしまったとか。
運営者 ・・・にもかかわらず、「この様な船を作った設計者が悪い」と言っているようなものですねぇ。
嵐が想定以上に強かったためなら今後の造船基準を設定し直す必要がある
造船基準を設定し直したら、船の事故はなくなるのかな。到底そうは思えませんが。
科学の歴史は失敗の歴史でもある。大切なのは、まず起きてしまった失敗を二度と繰り返さないという信念を持って徹底的に事実を冷静に分析することだ。さらにそこで得られた教訓を人類共通の知識として未来にいかす形で蓄積する、という現場の研究者の心意気が科学を創(つく)っていく原動力なのである。研究者が「悪くない」と思った時点で科学としての成長の芽は摘みとられたことになる。
ということは、過去の船舶工学の研究者は、戦艦大和が沈んだ地点で全員が「
自分が悪かった」と反省しなければ、その後の発展はないということなんでしょうかね。それは違うんじゃないですか?
飯坂 きっと、波動エンジンを積んでいてイスカンダルまで飛んで行けるように研究者は努力しなければならないんですよ(笑)。
運営者 この前、呉に行って大和ミュージアムを見てきましたが、そのような技術はなかったけどなぁ。むつかしいな。