食品や電気製品と金融商品はどこが違う?
運営者 しかしねえ飯坂さん、繰り返しになるのですが、わたしにはよく分からないのは、サブプライム商品はとにかく金融機関の手によって組成されているわけですよね。
飯坂 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)自体は、過半数以上は非常に標準的なものであってISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)の標準的な契約書でまかなえるものが大半を占めると思います。
債務担保証券(CDO)は一本一本違うオーダーメイドの金融商品であると見たほうがよいでしょう。
運営者 そうするとね、それらの金融商品が一本一本組成されているとして、高安氏が言っているのは、その組成した金融機関に製造物責任があるのではないかということじゃないんでしょうか。
その点について、「いやこれはプロ同士の世界なんだから、分かって買っているんでしょ。だからわれわれ金融機関には責任はないんですよ」というのは、他の世界の取引から考えるとちょっとない話なんじゃないですか、というのがこの論文の趣旨なわけですよ。前半部分で、かなり稚拙な論理展開を行っているのでこの肝心な部分の説得力も揺らぐのですが・・・
飯坂 いやそれはね、じゃあ例えば債務担保証券(CDO)がデフォルトになったとして、買い手側が連鎖倒産して問題になったという話は聞いたことがありませんよね。問題になったのは、売り手側がCDOを組成するために仕入れた、仕掛かり中のリスク商品と、CDOのリスクが高くて投資家に売れない部分の時価評価が思いっきり損になったので、評価損が発生してリーマンやベア・スターンズがつぶれてしまったということでしょう。
もし食品であれば、毒ギョーザが市場に出回ってけが人が出た場合、それは食品メーカーの責任が問われるわけですけれども、
運営者 JTの冷凍食品部門ジェイティフーズは中国製毒ギョーザ問題の煽りで、加ト吉になっちゃいましたからね。
飯坂 そしたらJTの人が、中国の仕入先に対して「お前らのところから買った商品がまずかったから、うちは看板を書き替えることになったんだぞ。どうしてくれるんだ」と迫るのと同じことですよ。リーマンブラザースがつぶれたからといって、CDOの仕入先に文句を言うのかというと、これも違うでしょ。
運営者 やっぱりリーマンの自業自得だと思いますけどね。
飯坂 そうですね。それで事業閉鎖になったからといって、どこに文句の持っていきようのないわけです。
運営者 株主が損害を被りますけどね。
その話はわかるんですけど、この論文に書いてあるのはあくまでもJTが変な餃子を売ったから非難されているということなんじゃないですか。仕入先はともかくとして。
飯坂 JTの冷凍食品部門てどうなったんでしたっけ?
運営者 加ト吉を買収して看板を掛け替えただけですよ。雪印がメグミルクになったようなもんです。
飯坂 リーマンだって、野村とバークレーズに売られちゃったじゃないですか。
運営者 事業主体が変わってちゃってるじゃないですか。それはJTと同列ではないですよ。
飯坂 だから、食品や電気製品や建物と、金融商品を比べるのはちょっとやっぱり無理がありますよ。