仕入れ先がウソをついていたというケースも
運営者 売り手責任の問題というのは、普通の人が素朴に考える問題なんですよ。だけどこの論文がずるいのは学者の責任だの監視機関の必要性だの、それに乗っかって本当に必要かどうかわからないことまで主張していることでしょう。
飯坂 岡本さんもまんまと乗せられていたじゃないですか(笑)。
運営者 彼の論旨がおかしいということは私もわかりますが、ただねー、売り手責任(製造物責任)のありなしについては、彼に一理あると思っているし、この主張についてだけは突き崩されてないんですよ。
結構そこまでは、まんまと乗せられてたんですけどね(笑)。というか、ホントのこと言うと前半部分はほとんど読んでなくて、「金融機関の売り手責任」のところにだけ目が行っちゃったんですよ。というのは、ボクも前から考えていたことなので。
飯坂 やっぱり、ワンフレーズの強さに乗せられてしまうところはありますよね。
運営者 コミュニケーションによって伝えられる情報には、事実情報と、相手の共感を呼ぶ説得情報があるんです。この2つのうちのどちらがより強い説得力を持つかというと、共感を呼ぶ情報のほうが効果があるケースが少なくないということに注意が必要です。
さっきから僕が、これは文系的な展開だと言ってるのは、そういう意味なんです。言っちゃ悪いが、この論理展開はアジテーションのやり方ですよ。
それで、セルサイド.バイサイドがあるのはわかったのですが、商品の組成に関していちいち金融機関が介在している以上、そこには製造物責任というのはあるのではないだろうかと、私はやっぱり思うんです。
飯坂 もちろん、重大な瑕疵があるとか、説明にウソがあったとかといった場合には、返金するような契約に当然ながらなっていますよ。このような条項は、レップス・アンド・ワランティ(表明および保証)条項と呼ばれています。
それでは足りないから、懲罰的な賠償を課せということなんでしょうか。
運営者 いや、そこまでは言っていないと思うんですよ。ただ、民事で訴えた場合はどうなりますかね。
飯坂 契約書にそういう文言があれば返金されますよ。
運営者 だけど金融商品を買った結果、損失を被ったことをもってして、瑕疵とは言えないでしょう。
飯坂 「言っていたことと違うじゃん」ということであれば駄目でしょうね。投資銀行にしても、どこかからリスクを仕入れてきてアレンジして販売するわけですから、元の売り主がウソをついていた場合には、ごめんなさいというしかないよね。
運営者 ということは、金融機関はその売り主を訴えることになるわけか。
だけど、そういうウソの連鎖でこういう金融危機になったということなんでしょうかねぇ。