アメリカ不動産バブルの崩壊
運営者 だけど、そういうウソの連鎖でこういう金融危機になったということなんでしょうかねえ。
飯坂 アメリカのサブプライム住宅ローンのごく一部ですが、そのようなウソによって作られた商品であったということは判明しています。収入証明を偽造したとか、お年寄りにバルーンモーゲージ(15年後までは元利均等だが、15年後の残高を一括返済または借換えしなければならない)を借りさせたりとか。
運営者 それが全体に波及して、この様な危機に陥ったのでしょうか。
飯坂 それが発端だったともいえるし、そういった不祥事も出てきたねーというくらいのことかもしれませんね。
大きかったのは、アメリカの土地の価格が全米一斉に下がり始めたということがあります。アメリカの不動産価格は基本的に、東海岸、西海岸、中西部、南部とでそれぞれ別の動きをずっとしていたんです。トレンドとしては上昇し続けてきたのですが、日本のように列島全部の地価が上がるというわけではなくて、西海岸が上がっていても南部はあまり上がらないといった感じで。
運営者 へー、そうなんですか。ということは各地域の不動産価格指数があって、ヘッジをかけるなんてこともできたりしたんですか?
飯坂 不動産価格指数の先物取引もされてますからね。値動きがバラバラだから、地域が分散されていればリスクも分散できるのではないかというのが、商品設計の時の仮定のひとつだったんです。
運営者 それはいいところに目をつけていますね。
飯坂 そうだったんだけど、不動産のバブルが行きすぎて全米で同じように、同じ時期にオーバーシュートしてしまったんです。
運営者 それもまたばかげた話ですね。アメリカの不動産市況の上昇は、二年や三年の話じゃないでしょう。少なくとも僕の知る限り十年は続いているはずですよ。
飯坂 まさに非線形の話で、不動産が上がるからサブプライムローンにもお金を出せますね、そしてサブプライムにお金が出るから不動産もさらに高く売れますねという連鎖だったんです。
サブプライム問題というのは、一般には所得の低い層向けのローンが焦げ付いた、と認識されているかもしれませんが、所得の高い人が投資用不動産を買うために借りたローンも多いのです。短期での転売を見込んで、当初2年間だけ金利が低いローン(2-28と呼ばれる変動金利ローン)とか、金利さえ払えば元本は満期までの好きな時期に返済できるローン(オプションARMと呼ばれる変動金利ローン)とか。
運営者 それじゃあ何のヘッジにもなっていなくて、ただのバブルじゃないですか。
飯坂 そうなんですよ。
運営者 普通であれば、不動産やいろいろな商品を組み合わせて大きなリスクを抱えないようにALMを作るんじゃないですか。そしたら、多少のピンチでは金融機関は潰れないのではないでしょうか。そんな単純なものじゃないの?
飯坂 すべてが悪くいくという可能性を過小評価していたことは確かかもしれませんね。
つまりデフォルト率が上がることによってクレジットスプレッドが広がって、流動性もおかしくなる、株価もおかしくなる、これらがすべて悪循環して、全体が失速する形になってしまったわけです。