遵法意識のない役員の存在はおかしい
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 でも法律を作るときにはそんなにいい加減にやっているわけではなくて、社会のシステムや経済のシステムがちゃんと回るように整合性を取って作られているわけですから、それが織り込まれた法律を無視してもいいという考え方はやはりおかしいと思うんですよ。
飯坂 細部に至るまで論理的な整合性をとって作っているはずなんだけど、しかし現実は刑法や刑事訴訟法は法務省・警察庁の利益をはかる圧力があるだろうし、商法は経済産業省の利益をはかる圧力が働くというところが色濃く残っているんじゃないのかなぁ。
運営者 少なくとも会社法を見る限りでは、市場の中における会社が必要な機能を果たし、株主の利益や取引先の権利が侵害されないように考えて作ってると思いますよ。
もしそうした世の中のシステムに依拠して自分がビジネスをやって稼ぎたいと思うんだったら、脱法行為はやっぱり悪ということになると思いますが。
飯坂 みんなが利益を得るための公共財としての法律はいいんだけれど、そうじゃない法律もあるんですよ。
税法なんかは、役所が作っているわけだから、「こうあるべきだ」というブレークイーブンのポイントよりは、役人の利益や役人の護身を担保するようにできている場合もあるようにも見受けられます。
もしみんながそう思うと、「もうちょっとこちら寄りのところでやりましょうよ」ということで法の潜脱行為が起きるようななことは、もしかしたらあるかもね。
運営者 法律はあるけれど、省令とか施行令を通達することで実質的に役所が自由に変えられますからね。
税金の話は、外資系金融だけでなく、税理士や会計士からも「役所の恣意性が問題である」という話はつとにされているわけで、それも人治主義の一環として問題とするべきだと思います。
それから、株主重視ということを、ホントにみんなちゃんと理解しているのかということも考えてみたいと思います。
飯坂 会社員みんなは理解していないでしょう。
運営者 少なくとも役員は理解しているかどうかですよ。
取締役というのは株主によって選任されている人たちなわけですから、そう考えて仕事していなかったら、その時点で委任関係を無視しているわけだから、善管注意義務違反です(笑)。
飯坂 取締役の人たちでね、「私は株主によって選任されたのだ」ということを正確に認識している人間がどの程度いますかね。
運営者 設立時に就任した役員でなければ、株主総会に出て選任されてひな壇に並ぶという儀式を経ない役員はひとりもいないはずですよ。
飯坂 そりゃそうなんだけど・・・。
でも、役員の内示を受けて、呼ばれて出て行っただけじゃない(笑)。
運営者 もしそうだとすると、株主の利益を最優先するという動機はないですよ。
だけど、本来は、選任の過程はそうかもしれないけれど、「自分は法律に従って動いているわけだから、自分を選んでくれた株主の利益を守る、自分の役割をきちんと果たさなければならない」と考えていなければおかしいのですが。