人類すべてが進歩の過程でたどるべき道
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 宗教にはまっている人は、宗教がすべてを覆ってしまって価値を相対化できなくなります。でも、「絶対」に対抗するためには、外部に普遍的な価値を求める必要があるわけです。じゃないと呪縛から逃れられません。
飯坂 アリの社会のようなもんですよ。高度な社会ではないけれど、なんだか神経物質の伝達によって何も考えずに個々のアリが動いて行くと、最終的にはそのコロニーの維持につながっていくと。
運営者 そのコロニーの遺伝子頻度を最大化することができるわけです。「社会性動物」の社会形態です。
飯坂 日本人もそうじゃないですか。
運営者 集団への帰属意識が強い人はそう振る舞う傾向がありますね(笑)。
それにひょっとすると、昔はそれでよかったのかもしれない。だとしたら、その戦略はこの10年で破綻したと思いますよ。
また、国家総力戦をやる場合は、その考え方では必ず負けることが証明されているわけです(日本だけじゃなくて全体主義の国はすべてです)。
それを西ヨーロッパの人たちは蹴っ飛ばして、自己の確立に成功した。
自己の確立は、自由の獲得につながったということです。これは多くの日本人が気がついていないけれど(気がついていても認めたくないけど)、丸山は主張していたことだったんですね。
共同体的な考えから抜け出して個を確立するというプロセスは、人類すべてが進歩の過程でたどるべき道であるという認識を彼はもっていたと思うんです。
それを丸山は「『超歴史的』な次元の範疇」と表現しています。「本来ヨーロッパの文化圏を前提とした歴史的範疇」という意味で、
「変化の感覚」
「自分が社会の創造者であるという信念」
「権力も相対的なものに過ぎないという意識」
「外的権威により屈服させられることのない普遍的価値への信念」(『開国』)
だそうですよ。
この「自分が社会の創造者であるという信念」は、日本と違って西欧では教会と王権が分離していて、“人に従わんよりは神に従え”という考えがあるから出てくるもので、抵抗権、革命権の根源なんだそうです。こう思っているから、革命を起こすことができるわけです。