企業本社の地方立地の効用は大きい
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 中央集権国家を百年以上やって、そういう田舎者ものマインドができ上がってしまったんですよね。自治という概念もない。だから、自治体も、うんともすんとも動かない。大切なのは現状維持の方ですからね。
飯坂 それで、モノだけを消費して生きていく。
運営者 それはそうですよ、「俺は田舎者だ」ってことを認めたくないから、モノに自分を仮託して、自分をアイデンティファイするわけですから。
飯坂 でももし自分が自立していれば、「俺は田舎者だ!」って言ってもいいわけじゃないですか。
運営者 日本で「田舎者だ」と威張っているのは、ムツゴロウみたいなエセ田舎者だけですよ。彼は結局、東京に来てテレビ出るわけですから。だけどそれっておかしいですよね。札幌のテレビ局が全国に発信したって、おかしくないじゃないですか。
飯坂 札幌は都会です。都会というより、北海道という植民地の総督府ということで。
運営者 植民地主義的な考え方からすると、そういう事になるんでしょうね。ムツゴロウ王国も結局は流山に移転するみたいだし。だけど、僕が言いたいのは、CNNはアトランタにあるということですよ。つまり、統治機構だけでなく、企業の本部機能までもすべて東京に集中してるというこの状況は、あまりにも異常だということです。
企業の本社とは何なのか。それは企業が活動する中で収集した情報を価値判断するために、情報が集まってくる所なんですよ。ですから、その「価値が集中する」企業の本社が、各地域に分散するかどうかというのは、中央集権か、そうでないかのいいバロメーターになると僕は思うんですよね。
アメリカだったら企業の本社は、西海岸にも東海岸にも、中西部にも、分散していますよね。
そうすると、それがなにがいいかというと、そこに勤めている人は、そこにある知恵を共有していることになります。そしてそういう人が当然地域住民なわけですから、企業活動の中で全国から集めてきた知恵が、そのコミュニティにもたらされることになります。そうすると、企業の本社が全国に散らばっていることによって、その地域の人間が、「自分たちの地域の特性を尊重しながら、しかし一地方でなくなるためにはどうすればいいか」について考え始め、努力し始めるということがあると思うんです。そういう文化を育むきっかけが、全国的な企業の本社があるということで芽生えるはずではないでしょうか。
まず動機が供給される、そして知恵がそこにある、だから精神的な自立が可能になるはずなんです。そして、自立するがゆえに、そこから強い競争力をもつアイデアが出てくるはずなんです。