新幹線誘致は地方の自殺行為
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 そういう状況は、東京に一極集中しているこの日本の地方ではありえない、少なくともむつかしいということが、問題なんです。今の日本で、地方で独自産業を新しく起こそうとしてもむつかしいのは、そのためではないでしょうか。
地方に根を下ろして、そこでじっくりやっていくという大企業が増えれば、そういう点が解決していくんだと思うんですが。
地場産業の強さというのはその逆ですよ。地場産業は、長い間の競争に勝ち残って生き抜いてきた。そして勝ち残った企業ですから、全国からそこにその産業についての情報がすべて集まってきます。地場産業はたいてい中小企業の複合体ですが、そこにある知恵は大企業の本社の知恵に匹敵します。それが、彼らの強みの秘密なんですよ。
飯坂 まあ田舎では、人もいないし、お金も回らないし、「東京には負ける」というよりは、「東京に出ないと、それ以上の進展はない」と思っているでしょうね。
運営者 日本には、大阪と東京という2つの首都があったのに、繁栄のモメンタムが東京に傾き始めると、それはどうやっても止めることができないわけです。ひっくり返すことはできないんです。
飯坂 新幹線ができた時点で、もう勝負は決まったんです。
運営者 その通りですね!
だから、みんな一生懸命新幹線誘致をやってるけど、あれは自殺行為なんですよ。あるいは「もうウチはダメなんで、東京にぶら下がらせていただきます」宣言か?
飯坂 ただね、日本という国土の広さから見てね、「別に東京一極集中でもいいじゃないか」という考え方もあるんじゃないないでしょうかね。
運営者 僕はそう思わないですね。それだと田舎で育った人間は、田舎者の意識しか持てないんです。それじゃだめなんですよ。田舎に育ちながらも、その地域に「日本一のものがある、世界に冠たるものが在る」という意識があって初めて、「自分も世界で戦って勝つことができるんだ」という動機づけができるからですよ。
飯坂 それは「範囲」の問題かもしれませんよ。松山にそういう大企業かがあったとしたら、宇和島の人はそれを良しとするかどうか……。ひょっとした「それでいい」と思っているのかもしれないし。
運営者 そういうふうに拡大していけば、「日本の中で東京だけに一極集中でもいいじゃないか」と考えることはできますね。さらに地球規模で考えれば、「日本になくったってアメリカにあるからいいじゃないか」ということになってしまう。
そういう問題じゃないんですよ。違うたとえをしますとね、僕は今でも英語ができないんだけど、昔は、自分が喋った言葉が外国人に通じて、それで意思の疎通ができるなどということは想像だにしなかった人間なんです。だから最初にヨーロッパに行くときには、「酸素ボンベを背負って行かなきゃいけないんじゃないのかな」と思っていたくらいなんです。月に行くような感覚だったんですね。だけどそれが一人で外国をぶらぶらできるようになったのはなぜかというと、自分の友達が英語で話してるのを見て、「あいつができるんだったら俺にもできるんじゃないのか」という、そういう身近なきっかけがあったからだと思うんです。これなんですよ必要なのは。
まったく未知の世界を、どのようにして自分自身に関連づけるかというのが、動機づけのために一番大切なことなんだと思うんです。