旧日本人のメンタリティー■
権威主義・虚礼重視
たとえ無能で、年功で出世した者でも、あくまでもメンツにこだわる
メンツの後ろ盾になっているのはカイシャ。肩書きを取ると、途端に無力になる
旧日本型組織においては、人の上に立つ人間は「ミニ天皇」でなければならないことになっている。ミニ天皇であるための要件の第一は、権威を保持することである。
小泉首相が、外務省改革を進めていた田中真紀子外相に与えたありがたい「重職心得箇条」の第一条にある、「重職と申すは、家国の大事を取計べき職にして、此重の字を取失い、軽々しきはあしく候。大事に油断ありては、其職を得ずと申すべく候。先づ挙動言語より重厚にいたし、威厳を養うべし」がこれである。
そしてその権威は本人がオールマイティであることに由来するので、彼は無謬(まちがいを犯さない)でなければならない。部下の意見に従うなど、沽券に関わると思っている。「どんなバカでも順番に階段を上るべきであり、役職者には役職者なりの格式が要求されるし、外部に対して恥ずかしくない待遇を受けるべきだ」というのは、旧日本人の中では極めて自然な意識である。
「そんなバカな」と思ってしまうが、旧日本型組織の中ではこれを本気で実践してしまうから滑稽である。役員の権威付けのために個室、車、秘書は必須アイテムである。さらに無駄な交際費、ゴルフ会員権、法人カードもついてくる。箸の上げ下ろしの面倒まで秘書役の部下がみてくれる。バブル期には、電機メーカーの役員が東南アジアに出張する際、改め役が先にやってきて、ホテルの部屋の中のクーラー、テレビ、冷蔵庫をそのメーカーの製品に付け替えさせたという話を聞いたことがある。
ワシントンでは、IMF総会のシーズンになると邦銀の頭取がお供をつれて大挙して押しかけるため、リムジンが不足して、わざわざニューヨークからかき集めることになる。こんなことをしているのは邦銀だけだそうだ。会議中は待機しているリムジンが違法駐車をしているため、警察は違反切符の切り放題となり、束にした違反切符を持って道路を走り回っているらしい。罰金を払うのは日本の預金者なのだから、警官が張り切らない方がおかしいだろう。
こうした経営者の権威づけに使われるコストは、どれほど収益に貢献しているのだろうか。彼らは待遇に見合った経営能力を持っていたのだろうか。であるならば、銀行も電機メーカーもこんな惨めなていたらくにならずにすんだのでないだろうか。