新日本人のメンタリティー■

プライド

　つらい時に自分を支えてくれるのはプライドである。そして「自分は仕事で妥協したくない」と考えるのは、誇りを持っているからだ。新日本人にとっては、神も恥じる対象も、自分以外にはない。


　プライドといっても、「自分は人様よりも偉いのだ」と他人を見下す自己目的化したプライドは、権威主義的な旧日本人の持ち物である。新日本人が持つべきプライドは、自分の仕事に対する誇りなのだ。なぜならば仕事の相手に認められているのは自分自身の「存在」ではなく、自分の「仕事」であるからだ。
　新日本人のプライドは「自分の仕事で本当に顧客は満足しているのだろうか」「自分の仕事の質は給料に見合っているのか」「私は社会に良い価値を提供しているだろうか」といった外向きの方向性を持つはずである。


　自分が属する組織についてのプライドも、その組織が顧客のニーズを満たす良い仕事をしていて初めて持てるものであって、そうでなければ「我が社は輝く歴史と伝統を持っている」「顧客はうちの暖簾を信用している」と威張っても、誰も振り向いてはくれない。それはただの独り善がりの権威主義でしかなくなってしまう。きょうび、権威では飯は食えない。


　自分の組織に誇りが持てない日が来たら、それはその組織を離れるべき時である。自分の器が大きくなって組織や仕事のサイズに合わなくなるというケースもあるだろうが、今の日本ではどちらかと言えば、組織の側が設立の趣旨を忘れて仕事の質を劣化させ、新日本人社員が望むレベルに較べて低すぎる価値しか社会に提供できなくなってしまったので、それに幻滅して組織に対する誇りを失うことの方が多いのではないだろうか。新日本人は地位よりも、仕事に対する誇りなくしては働けないから、あらゆる努力を尽くしても組織(が社会に提供する価値)に対する誇りが回復できないのであるなら、組織を去る以外の選択肢はない。それは残念ではあるが、無理のないことである。


　プライドを持って働くために新日本人が持つべきは、自分を「無」にして顧客に相対し、自分の仕事が顧客に提供する価値に対して誇りを持つ態度である。またそのレベルにまで自分の仕事の水準を引き上げるよう努力をすることが望ましい。