新日本人の価値志向性■
変革志向性 危機意識
現状認識力があるので、「常に進化しなければ競争に負ける」という健全な危機感を持つ。だから変革を望み、価値を尊ぶ
ソニーの出井氏は、声を振り絞って訴えている。
--真剣に改革を! (中略) ソニーが大きくなりすぎた事もあり、安定した今のままでいいのでは、という気持ちがどこかにあるのでしょうか。本質的な変化を求めず、表面的な変化で満足していませんか? 私は本心から危機感を感じています。「変革」ということを私が言いつづけているのは、決してトップの「変革のための変革願望ではないのです。--
--「変わる」というのは確かにエネルギーのいることですが、本質的に何をしなければいけないか、ということを常に念頭において、恐れずにどんどん議論してください--
危機意識は問題解決のスタート地点だから、危機意識がなければ、問題の本質は発見できない。ゴーン氏は、改革のためには「燃えさかる甲板(プラットホーム)が必要だ」とたとえているくらいだ。
新日本人は出井氏の言うように、「現状は常にヤバイ。だから常に自分自身が変わっていかなければならない」という認識を持っている。そして常に変身していく覚悟があるし、新しい「知」に基づいて脱皮を繰り返している。何歳になっても、決して現状に安住はしない。
「現状を守りたければ、変わらなければならない」。ルキノ・ビスコンティ監督の映画「山猫」の冒頭に提示される言葉である。没落していく一九世紀のシチリア島の孤高の老貴族ですら「変わりゆく時代と新しい思想を受け容れ、新しい世代に活躍の場を提供するのが自分の役割だ」と認識している。その気高さにわれわれは心を打たれる。変わることを避け続ける人間が、現状すらも守り切れないのは、あまりに単純自明であろう。
あらゆる組織は、改革と安定の時期を繰り返す。例外はない。ところが旧日本人は、「石にかじりついてでも変わりたくない」と思っている。
一方、新日本人にとっては、変革志向性は既にビルト・インされた特性である。彼の認識では、「変わること」は前提であり、当然のことなのだ。変わること自体に疑いを差し挟む余地はあり得ない。なぜならば、自分が主体的に物事を変えていくことが、「価値の創造」にストレートにつながるからである。「価値を創る」とは、今までと違うものを創り出していくことだ。だから変化は新日本人にとって好ましいものであり、出井氏のように、むしろ変わらないということに焦燥感を感じるはずである。