新日本人のネットワーク運営力■
4.インターネットは、利用者の思考法をネット社会対応型に徐々に変えていく
インターネットは無機的なネットワークでありながら、無から有をつくることができる存在である
人脈がつながってさえいれば、ネットワーク対応型の人間はネットの機能をフル活用することができる。そこでインターネットの登場はネットワーキングの世界に非常に大きな変革をもたらしたと言えるだろう。多人数に対する通信コストがインターネットによって大きく引き下げられたために、ネットワーク能力を持つ人間のチャンスは飛躍的に拡大した。この重大性を認識する必要がある。
インターネットはパソコンとパソコンをつなげているものでしかない。しかしそれは単なる無機的なネットワークではない。パソコンの端末を操っているのは人間なのであり、実は機能として非常な有機性を持っている。これぞ、「無から有をつくることができる存在」なのである。ネット錬金術だ。ネットを通して相手にできる人数は、パーティーでビール片手に談笑できる人数の何十倍もいることになる。しかも時間的空間的な制約を超えているわけだから、非常に便利だ。
インターネットによってBBS(掲示板)やチャットといった全く新しいコミュニティがネットワーク上に実現した。これは数千人規模になろうとも、運営のための人手を多く必要としない。この掲示板の運営者の適性も、以上に述べたネットワークの特性とほぼ重なっているとみてよいだろう。
現在のところインターネットの利用者は、電子メールや掲示板、仕事で使うグループウェアといった、相手の表情の見えない情報の交換を行っている。下手をすれば相手の名前すらわからない。テキストだけでコミュニケーションを行う場合は、純粋に情報の価値をテキストの中から読み取る必要に迫られるわけだ。相手の肩書きや属性によって情報の価値を判断する手が使えないので、組織至上主義、肩書き至上主義の旧日本人は情報の値打ちがわからなくて、途方に暮れてしまうだろう。
そうした新しいコミュニケーションをこなしていくうちに、自然にネットワーク・リテラシーを磨くこともできる。「相手が誰であるか」に意味があるのでなく、「相手が何を言っているかが問題だ」という、当然のことに気がつくはずである。
ネットワークの参加者の対人価値は二つに分かれるだろう。
○自身が掛け値なしに価値の高い情報を持っているという「情報ソース」
○価値の高い情報はどこにあるのかを知り、それを編集したり必要な情報を必要な人のところに届ける交通整理をする「編集者」
こうした、存在感のある人のところには自然に情報が集まる。しかしそうした機能を持っていない人は単なる一参加者でしかないし、ネットに書き込みすらできないことになる。
ここでは、実力なくして世渡りだけで出世してきた旧日本人は、権威の衣を引きはがされて丸裸にされてしまう。
そして、賢明な読者の中にはもう既にお気づきの方も少なくないだろうが、会社とは、本来ここで書いたような、機能的なネットワーク・コミュニティ以外の何ものでもないのだ。新日本人は、社内でも社外でも分け隔てなく、このようなルールに従って対人関係を構築しているはずである。以上の記述を「へえー、ネットワーク・コミュニティってこういうものなんだ。会社とはずいぶん違うもんだな」と感心しながら読んだ読者は、カイシャという名の生活共同体に住んでいるかなり筋金入りの旧日本人である。
縷述したネットワーク・コミュニティの特性は、「機能体である会社組織の内部の人間関係は、本来こうでなければならない」という意味であるし、ネットワーカーとしての条件は、「新日本人としての対人関係構築原理」、ネットワーク運営能力は、「マネージャーの組織運営心得」もしくは「経営者としての最適な組織風土醸成法」と読み替えていただいてもよい。
これらは「無から有を作る」ための洗練されたテクニックなのである。ここから外れて内向し、ライバル企業より相対的にネットワーク能力を低下させた旧日本型企業が競争から脱落していくのは当然すぎるほど当然のことなのだ。ネットワーク能力は現代のビジネスマンに必須の要件なのである。