構造改革とは市場主義を徹底すること
儲かる企業体質を回復するには、問題に正面から向き合う必要があります。
タコ足経済を打破する意識とは
タコ足経済にはこのような問題点があります。それを支えているのは個人個人の意識です。中でも前章で指摘した仲間意識や悪平等主義、「長いものに巻かれろ」というぶら下がり根性や考えの足りなさです。早い話が今の日本経済は、企業がマーケットで勝って利益を上げられなくなったので、政治家をそそのかして税金で食べようとしているだけなわけで、市民はだまされてその犠牲になっているという構図でしょう。
そこから抜け出すためには、まず自分たちが強くならなければならない。自分自身にウソをつくのをやめて、問題に正面から向き合う必要があると思います。目指すべきは、「儲かる企業体質を回復すること」です。それと同時に、なんでも政府に頼ろうとする態度を改める必要があります。
タコ足経済では、日本の将来はお先真っ暗ヤミです。どうすればタコ足経済を打破できるでしょうか。そのために必要なもの、それが「構造改革」だとわたしは思います。
「構造改革とは何か」という定義については、これといってい決まったものがあるわけではありませんが、わたしは「マーケットを重視して、市場主義を徹底すること」と定義するべきだと思っています。
世界中の国が参加しているマーケットには欠陥がつきものなのも事実です。しかしマーケットでは、限りなくたくさんの人たちによって、ものの良し悪しや値打ちが決められるわけですから、マーケットはいちばん公平で正しい価値基準を提供していると思います。マーケットは、あらゆる物事の価値を経済的な物差しで測ることができる場なのです。ですからマーケットに根ざして利害の調整をはかるのは、合理的なことだと思うのです。マーケットを介した自由競争を制限したうえで、企業に私益を追求させると必ず消費者が損をすることになるでしょう。
タコ足経済が良くないのは、政府が特定の民間分野にお金を注ぎ込んで自由競争を歪め、マーケットの機能を損なわせているからです。例えば大赤字になっている関西空港会社には、これから10数年間にわたって2000~3000億円程度が空港整備特別会計から注入されることになっています。この分を着陸料に転換すれば、関西空港は世界一着陸料が高い空港になるでしょう。そうすると顧客は飛行機を使わずにトラック輸送に変えるかもしれません。それが自然な経済の流れです。
ところが政府が強引に水深14メートルもの海を埋め立てて空港をつくった巨額の借金を返済するために、この自然な経済の流れに歪みが生じるわけです。こういったこと(民業圧迫)が日本中で起こっているのです。そればかりでなく、民間企業も業界団体をつくって、自分たちの寡占を脅かす新規参入者を排除しています。それによって消費者も不利益をこうむるし、寡占している企業側も国際競争に負けてどんどんじり貧になっているのが現状です。みんなが汗をかいても報われないのは、市場が歪んでいるからなのです。