目に見えない価値は受けいれられない2
改革者たちは、新しい商品やサービスや、ビジネス上のアイデアやシステムなどを次々と提唱します。彼らは自分の利益を考えていないわけではないでしょうが、それ以上に「多くの人たちに新しい利益を提供できる」という信念にもとづいて行動しているわけです。しかし中間派の人たちは守旧派の人たちと同様に、そうした新しい価値を積極的に評価しようとはしません。だからどんなに安くてよい商品でも、大企業のブランド力がなければなかなか売れませんでした。
さすがにいまは、安くてよい商品は消費者に受けいれられられやすい傾向にあると思います。中間派は付和雷同的な人たちですから、「これがいい」という話が広がるとワッとそれに集中して簡単に流行をつくり出します。だからテレビであれだけお買い得品や流行のラーメン店についての情報(10年後に振り返ってみると、どれだけ意味があるのかわからないような情報がほとんどだと思いますが)が視聴率を集めているのです。
そうした流行を産み出す仕組みに乗っかっている商品については中間派の人たちにも比較的拡がりやすいと思いますが、しかし目に見えない価値やコンセプトはあいかわらず守旧派にも中間派にも簡単に受けいれてもらえないと思います。改革者の地道な努力はなかなか理解されません。むしろ中間派の人たちは、どちらかというと自分の周囲で目立つことをしている人がいれば足を引っ張ろうとする傾向があるでしょう。その動機は妬みのような深いものではなくて、ただ単に「自分と違う人は嫌だなあ」と思う心持ちに根ざしているような気がします。それはやっぱり改革を否定する心の動きです。
このようにして、守旧派と中間派のタコたちは手を組んでタコツボ社会を守り、各々のタコツボ中に入って世の中の変化を「嫌だなあ」と顔をしかめながら伺っているわけです。