自己認識
まずの図の左上の四角の中から見ていきましょう。
旧日本人は自分の仕事や、組織における自分の役割をどのように考えているでしょうか。彼らの最大の特徴は、会社に意識的にも実際的にも「ぶら下がっている」ことにあります。会社の権威を盲目的に信じているから、ぶら下がれるのです。
でも会社というのはあくまでも、人とお金と物と情報が集まってできている人工物です。だからその中ではまちがいが起こることもあるし、失敗もたくさんあるでしょう。会社には絶対性などないのです。しかし旧日本人は、自分の属す組織に幻の絶対性を見て、その権威に依存しています。そこに会社の「神話」がありました。会社の中では自分の意思を否定されても苦痛を感じませんし、「自由を奪われてもいい」とさえ思っています。
そして彼らは、社内や子会社、古いつきあいの取引先や出入り業者など自社の「権威」が及ぶ範囲だけが、自分たちの生きる世界だと考えています。会社の看板の陰に隠れているから、自分の弱さがカバーできるし、威張れるわけです。閉鎖的な社会観を持っていますから、新しい取引先を開拓しようなどとは考えないません。自由市場を最初から信じていないのです。旧日本人にとって重要なのは自分たちの内側の世界の中だけで通用する価値観なので、目の前にある固定的な取引関係の外に広がっている世界の「普遍的な価値」については知る必要がないと思っています。
つまり旧日本人は、非常に狭い共同体の中で生きていければそれでいいという自己認識を持っているので、「顧客や取引相手の利益を親身になって考えなければならない」なんて思っていませんし、「普遍的な価値観やルールで行動しなくてもいい」と考えるわけです。こういう狭い自己認識が旧日本人ビジネスマンの考えや行動を束縛して、新しいビジネスの種や儲けのチャンスをみすみす逃す結果になっていると思います。