セルフ・マネジメント
図の左下に書いてあるのは、人が仕事をするときに自分の行動をどうコントロールするかについてです。
旧日本人は自分の組織の枠組みの内側に収まる範囲の行動なら、ほとんど考えずに反射的に行動できます。その半面、「仲間うちの仕事のやり方をもっと改善しよう」という向上心には欠けています。「現在のやり方を守り続けることが大切だ」と思っているからです。ですから新しい知識をとり入れたり、仕事から学習してもまったく評価されません。下手にものを考えるよりも決められたことを黙々とやる方が波風が立たないわけですから、しだいに物事を考えなくなってしまいます。
さらに、仲間うちの決まり(掟)については、守らなければ仲間に対する裏切りになってしまうので絶対重視しますが、その半面法律をはじめとする社会一般のルールについては、「どうせ建て前なんだろう」と勝手に解釈して守らなくても平気です。だから社会的な決め事を新しくつくっても、なかなか実効性がなくて尻抜け状態になることが多いわけです。旧日本人にとっては、世の中の常識や決まりよりも自分たちの組織の掟の方が優先であり、「組織の中で認められていることなら法律で禁止されていてもやっていいんだ」と考えています。たとえば商法上は、ある営業期間に出た損失はその期中に処理する必要がありますが、それをずるずると引きずって溜まったのが各企業が抱えている不良債権です。
旧日本人の中では組織の価値観が最優先ですから、その組織の価値観がゆるくなってしまうと、個人個人のセルフコントロールが利かない状態に陥るわけです。肝心な組織の決め事自体も自分にとっていちばん都合がいいように解釈し直してしまうのですから、旧日本人の世界ではなんでもありということになってしまうでしょう。それは現在、いろいろなビジネスの現場で見られているダッチロール現象の原因のひとつなのです。