社会的スキル
こういうかなりいい加減な自制心の下で、「他人は自分と同じようなものの考え方をしている」という対人感覚にもとづいて、仕事をするとどうなるでしょうか。それが、図の右下に書いてあります。
まず旧日本人は、会社の権威に自分を委ねていますから、会社の権威が揺らぐような改革や秩序の混乱は絶対に認められません。旧日本人はあらゆる変革を断固として拒否するのです。
また彼らは自分と他人の違いを踏まえていないので、顧客を無視して自分本位にふるまいがちです。目的というのは本来は会社の外にあるものなのですが、旧日本人の場合は会社の現状を守ること自体が自己目的化していますから、「自分が属している組織や部署の目先の利益だけ得られればそれでよい」という部分最適化をしがちになります。
さらに自己中心的で他人を思いやる心が欠けているので、他人とうまくコミュニケーションができません。旧日本人の世界では「あうん」の呼吸で、何も言わなくても相手の気持ちが分かるのがよいことだとされていました。「俺の目を見ろ、なんにも言うな」というやつです。それは自分のたちの仲間うちでは作法に従って相手が何を望んでいるかがわかるでしょうが、まったく違う世界の人たちとは会話する手段がないということなのです。それでも不自由しない世界を旧日本人はつくって、その中で生きていたのです。