日本全体を覆う巨大ピラミッド
ところで日本社会全体は、この「支配=従属関係」で組み立てられた巨大なピラミッドであることにお気づきでしょうか。旧日本人が他人との関係をつくる場合の基礎であるこの支配=従属関係は、日本中を覆っています。まさに日本社会は旧日本人型のピラミッド社会なのです。
社会構造全体を通してピラミッドの頂点に立っているのは、霞ヶ関にいる官僚たちです。彼らは一生懸命勉強して東京大学を卒業し、難関の公務員試験を通ってこのピラミッドの支配権を獲得したエリートたちです。役人がピラミッドのてっぺんにいて、あらゆる分野を抑えつけていますから、このピラミッドの構造は変えようとしてもなかなか変えられるものではありません。彼らも構造改革の抵抗勢力です。政治家も力を持っていそうですが、役人がいなければ大臣はなにもできないというのが実情です。
国会議員たちは、政策を考えるよりも予算を地元に引っ張るのに忙しくて、官僚と喧嘩する余裕などありません。むしろ官僚と癒着する方が予算を獲得しやすいので大切なことなのです。役人優位のことを民主主義に対して「官主主義」という表現すらあるほどです。彼らは「国のため」といいわけしながら自分たちの権益(予算・法律・人員・傘下法人)を拡大し、税金を食い尽くしているのです。
霞ヶ関の中にもピラミッド型の秩序があって、そのてっぺんには財務省がいます。財務省は事実上予算編成権限を持っているので、他の役所に睨みをきかせられ、予算と人事で官界を支配しています。
その財務省がちょっと前まで支配下に置いていたのが銀行や証券会社などの金融業界です。今でも財務省と金融庁には人的なつながりがあるので事実上支配権を持っているかもしれませんが。銀行は財務省と同じように、産業界のピラミッドの頂点に立って睨みをきかせています。日本では、企業が必要とするお金を調達するときに、株式市場で株を売って調達する直接金融よりも、銀行を通した間接金融の方が比率が大きいので、銀行の産業界に対する発言力が大きいのです。銀行は融資と引き換えに各企業に役員を送り込んで、自分たちの金融グループを支配しています。
その下にいるのが大企業です。大企業は大きな顔をしていますが、銀行にはかないません。でも子会社に対してはオールマイティーです。子会社はそれがつまらないので孫会社に向かって偉そうにしています。その下にある孫請け企業が、大企業を中心にした支配=従属関係のピラミッドの底辺を構成しています。外資系企業が煙たく思われているのは、こうした産業をピラミッドの秩序の中に入らずに、「順番を飛ばしたり、中間の媒介者を中抜きする厄介な存在だ」と思われているからです。