東京中心の中央集権国家
そういう産業構造を縦に切ったピラミッドだけではなくて、日本には東京を中心とした地方に拡がる大ピラミッドもあります。日本は中央集権国家なので、役所でも企業でも東京に主要な機能が集中しています(アメリカでは政治機能はワシントンにありますし、金融業以外の大企業の本社は全国に分散しています)。
東京の次に偉いのが政令指定都市や県庁所在地にある役所や大企業の出先であり、市町村はそこに従属しています。本来であれば、住民のためのサービスのフロントに立っているのは市町村なのですから、市町村にいろんなことを決める権限があれば便利なのですが、実際のところは東京に住んでいる地方の実情がわかっていない役人が適当に決めた決め事にもとづいて全国一律に行政をやっているケースも少なくありません。これは「自治」ではありませんね。
東京への集中はますます激しくなっています。昔なら地方は、東京に負けない独自の価値を創り出すエネルギーを持っていたし、戦前は関西の工業出荷額は日本一でした。大阪には大企業の本社が集中しており、「商都」と呼ばれていたくらいです。ところが戦争に負けてこのかた、大阪にあった企業の本社は多くが東京に移転し、関西の工業出荷額はどんどん減少してついには名古屋圏にも抜かれてしまいました。
新幹線や高速道路が東京と地方都市とを結ぶことで、各地方の独自文化も失われていきました。どの町も東京のミニチュアのような個性のない町並になってしまい、駅前にはマクドナルドと吉野家と英会話学校と消費者ローンの支店があり、中心街の商店ががさびれて、その分シネマコンプレックスを備えた東京資本の郊外型大規模ショッピングセンターに客を取られています。「新幹線や高速道路が欲しい」と言っている人たちは、「それが来ればますます過疎化が進む」ということを内心では知っていて、「地元だけで生き残るのはもう無理なので東京にぶら下がらせてください」と宣言しているのかもしれませんね。
地方は自活をあきらめて、すべて東京に依存するようになったのです。今やあらゆる自治体が国の公共事業や補助金をあてにして生きています。国からの分配金である地方交付税をもらっていない自治体は東京都だけです。
日本全体を覆っている大ピラミッドは、ますますその高さを増し裾野を広げているのです。