有意義なアイデアはなぜもみ消されるのか
タコツボ社会は、効率性が悪いし、何よりも中にいる人間にとって仕事がつまらないというシステムです。
特に、社会的な資源の配分を決める立場にある大企業の人間は、寡占状態で競争がないだけにプロ意識のない仕事をしがちです。彼らがその地位にあるのは、彼らの先輩たちがつくってくれた素晴らしい商品や、必死の思いで開拓してくれた取引関係や販売ルートがあるからです。
彼ら自身はそういう新しいものをつくる意欲もなければ能力も磨いていないので、現在自分が享受している生活を守るためにタコツボ社会の構造秩序を守ることしか考えていません。したがって彼らは守旧派的な発想をしがちになり、新しい有意義なアイデアでも階層秩序を乱すようなものであれば、自分たちの保身のためにゴミ箱に捨ててもみ消してしまうのです。彼らは全員が得をすることよりも、地位の保全=タコツボの維持が大切なのです。
そしてこのタコツボ社会を支えている最大の要因は、マーケットに参加している消費者が、「価値がどのようにつくられているのか」という構造を理解しようとせず、親会社のブランドや信用をだけを見てものを買っていることにあります。「この会社の商品なら大丈夫だろう」という、根拠のない権威への信仰がそこにあります。結局つまらないものを高く買わされているだけなのですが、それは日本の消費者全体に旧日本人的な傾向があることの表れなのです。
でも、もし消費者がもっと賢ければ、もっとコスト構造が低くてアイデアが豊富な下請け会社や孫請け会社から直接商品を買うルートをつくって、よい商品をより安く買えるはずなのです。おそらく、現在100円ショップで起こっていることは、このタコツボ社会に風穴を開けることなのだと思います。消費者が賢くなり、マーケットがきちんと機能し始めると、タコツボ社会を維持し続けることは不可能になってくるはずなのです。