お神輿経営の病理
お神輿を担いでふらふらと漂っているから、会社は儲からない。
お神輿経営の病理
こんな意識を持った旧日本人ビジネスマンたちが集まっているのがカイシャという組織です。会社がなぜ儲からないのかという疑問に対する答えのひとつとして、わたしは会社が神輿のようなものだからではないかと考えています。神輿というのは、みなさんご存じの通りお祭のときに、重さ500キロ~1トン程度の神輿に、神社のご神体を入れて、百人近い人間で担いで町中を練り歩くものです。ほぼ日本全国で、江戸時代から今日に至るまで継承されている日本の伝統的な風物です。
その特徴を考えてみましょう。
、おもしろいことに日本の会社の社長や役員というのは、たいした実権を持っていません。人事権以外の権限は、ほとんどミドルが持っています。情報はすべてミドルのところに集まるため、ミドルは情報の出し入れをコントロールして経営者の意思決定を操ることができます。これを「ミドル・アップダウン・マネジメント」といいます。
経営者は、サラリーマン人生の勝者とみなされています。彼らは個室、送迎車、秘書、ゴルフ会員権を与えられ、静かに余生をすごしている人びとなのです。とはいえ建て前としては偉いわけですから、まちがいなく仕事ができるようミドルがサポートして、役員になるとほとんど自分で文章を書かなくてすむようになります。そうやって社員全員が信仰できる「会社の神話」を人工的に生み出しているのです。取締役会には頭数は揃っていても、そこで何かが実質的に討論されたり、何かが決定されるということはありません。すべては他の場所で決まっています。役員会は空虚な権威でしかないのです。
社員は社長や役員の権威に寄りかかっているものの、実権を持ちません。ですから社長や役員は神輿の上に担ぎ上げられている人たちで、わっしょいわっしょい担ぎ上げているのはミドルです。ミドルは会社の主役として、いちばん面白く生きている人たちです。彼らは若い社員を10年ほどこき使って、組織の掟を心得た者だけをミドルの仲間に引き上げてやります。「ぞうきん掛け」は、日本の若手サラリーマンが時間を無駄にすることで悪名高いのものですが、これはミドルが若造を仲間に入れられるかどうかチェックするための通過儀礼なのです。もちろんそのときに自分の恩を一生忘れないように因果を含めておきます。
ミドルは何か起こったらその責任はすべて社長や役員に押しつられる立場にあるので、とっても楽しい会社生活を送ることができまです。ミドルは実質的にノーチェックの立場を確保しているのです。でもあまりにも神輿の担ぎ方が悪いと、社長に人事権を使ってどやしつけられるので、そこだけは注意しておかなければなりません(役員は地位さえ保全されていれば文句を言わず、役員内部の権力争いに専念する)。あとはまったく好き放題ができるおいしい立場なのです。だれも経営のことなんか、考えていないのです。
彼らの部下である年少の社員たちや、本来は会社のオーナーである株主は、見物人として神輿が担がれていくのを傍観しています。時々神輿が見物人の中に突っ込んでけが人が出ますが、それもまたイベントのひとつだと考えられています。
そしてここには、日本型組織の特徴が集約されています。まさに御輿は古い日本企業そのものなのです。