共同体人からルネサンス人への脱皮
教会の権威を否定し魂を解放した商人文化がヨーロッパを「再生」した。
ルネサンスは「再生」を意味する
ところでこの「新日本人」の誕生のような、「古い意識に浸っていた人びとの中から新しい文化を創造する革命的な変化」は外国にもあったのだろうか、という疑問がわいてきます。例えば欧米の人たちはこういう変化を体験しているのでしょうか。そこで世界史を見渡してみると、まさに今の日本人の置かれている状況とぴったり一致する時期があることに気がつきました。それは14世紀から16世紀のヨーロッパで興ったルネサンスの時代です。
ルネサンス以前のヨーロッパは、4世紀にローマ帝国がキリスト教を公認して以来長いあいだ教会の精神的な支配の下に、まさに旧日本的な封建的社会をつくっていました。カソリックというのは「普遍」という意味で、「世の中の人はみんなキリスト教の神の世界の中に入るべきであって例外的な考え方は許さない」「教会の外に救いはない」という考え方だったわけです。だから中世のキリスト教の支配の下ではすべてを「神の目」(という迷信)を通して見たり考えたりしていたわけで。個性や新しい工夫というのは歓迎されず、文化的な進歩はあまりありませんでした。
キリスト教(誤解されると困りますが、教会支配のことです。教義ではありません)は人びとの心を支配しただけではなく、字を書けるのは教会の神父だけだったので、文化も法律的なことも一手に教会が引き受けていたわけです。人びとは財産も教会に預けていましたから、教会は金貸しまでやっていたそうです。そんなふうに教会がすべてを支配し、人びとの創造性が抑圧されていたために、中世においては農業の生産性もあまり進歩しなかったので人口も増えず、長期的に見ると減っている期間もあったほどです。
文化的にもヨーロッパは、ギリシャの科学や哲学を受け継いだアラブの国に劣っていました。中世が暗黒時代だったといわれるゆえんです。中世のヨーロッパの人たちは教会を中心にした共同体に住んでいて、精神的にも物質的にも共同体に依存していたのだと思います。
しかしそのヨーロッパに光をもたらしたのが、14世紀ごろイタリア北部のいくつかの都市国家で花開いたルネサンスでしたルネサンスの語源はフランス語で、「再生」を意味します。今の日本にいちばん求められていることですよね。
ではルネサンスの300年間にヨーロッパの人たちはどのように変わったのでしょうか。