トルコやインドとの交易・大航海
ルネサンスの時代は文化の異なる外国との交流が発達したり、未開拓の世界に冒険に乗り出す時代でもありました。自分と違う人たちについて深く知ることは、「人間とは何か」という一般的な考察を深めることにつながります。
ご存じの通りコロンブスはジェノバの出身ですし、アメリカの国名の由来になっているアメリゴ・ベスプッチはフィレンツェの出身です。それまで狭い世界に閉じこもっていた人びとが、「他の世界にどんどん出かけていっていろいろなものを見たり聞いたりしたい」と考え始めた時代だったのです。
ギリシャ・ローマの知恵の再評価
そして最後にルネサンスの人びとは、なによりも知恵を求めていました。
彼らが学んだのは、キリスト教が人びとの精神に影響を与え始める以前のギリシャやローマの古典でした。それは法律、哲学、科学、芸術、建築などあらゆる分野にまたがっていましたが、中世の間にすっかり忘れ去られていたものでした。1453年には東ローマ帝国(ビザンチン帝国)がトルコに攻められて滅亡したために、ギリシャ人たちが大量にイタリアに亡命して古代ギリシャ以来の文化を伝えてくれました。こうした過去の人類の遺産に学んだ人びとは、「本来人間は、教会などという自分たちがつくった仕組みにとらわれずに、自由にものを考えたり創造力を発揮できる存在であったのだ」ということを学んだのではないかと思います。ルネサンス人は自らが無限の可能性を持っていることを過去の中に見出したのではないでしょうか。
このようにルネサンスは非常に多くの分野にまたがったムーブメントだったわけですが、これらの動きを通してヨーロッパの人びとは中世の共同体の一員から、自立した個人へと大きく精神的変容を遂げたげたのではないかと思うのです。
であるならば、わたしは今まさにこの日本で、ヨーロッパに700年遅れてルネサンスが訪れているのではないかと考えます。いま日本人は、かつてなかったほどの変質を遂げようとしているのではないでしょうか。そしてその変化はビジネスの現場から、若い世代の間から起ころうとしているのです。
ルネサンス時に起こった意識の変化と、旧日本人が会社という共同体から抜け出て独立した新日本人になるための条件は、ぴったり符号していると思います。