4つの選択肢
目覚めた人たちはまず、自分が旧日本人とは違う人種であること、すなわち新日本人であることに気づくでしょう。彼らの目の前には、4つの選択肢があります。
まずひとつは、「まだ時期尚早(この言葉は旧日本人が改革案を否定するときの常套句ですが)」と見て、旧日本人に合流するという判断です。これは結果的には旧日本人と同じ行動をとるわけですから褒められたことではありませんが、ここで暴発し、死んでしまってもしかたがないので臥薪嘗胆の心持ちで雌伏するというのも選択肢としては排除しません。
次に、あまりのあほらしいさに愛想つかして、旧日本人と闘うことなく退社してしまうという手もあります。確かに自分で自分の足を喜んで食べている旧日本人を正面から説得するのはばかばかしい限りです。「イチ抜けた~っ」と放り出したい気持ちもわからないではありません。最近では脱サラして山にこもって炭を焼くというサラリーマンが増えたために、炭の生産量の減少に歯止めがかかったという話すらあるほどです。
新日本人にとっての3番目の選択肢は、あほらしいから「社内引きこもり」になるというものです。ノーベル賞を受賞した田中耕一さんのような理系の研究者は、だいたいこの戦略を採用しています。会社が続く限りは自分の好きなことができるわけですから、ある部分に目をつぶってしまえば社内引きこもりというのも選択肢のひとつではあるわけです。
しかし以上話した3つの方法では、会社は何も変わりませんし、旧日本人と意識は違っても、やっていることはあまり変わらないことになります。情熱にあふれる新日本人は、それではどうしても満足できないでしょう。そこで最後の手段である「社内闘争」に立ち上がるという選択肢にたどり着きます。社内闘争に負けたらどうなるでしょうか。旧日本人は、相手を身内と見なしている限りは敵の存在を全否定しないものです。会社の中での生存は許されるので、闘争に敗れた新日本人は社内引きこもりとして閉門蟄居して他日を期すこともできます。
しかし旧日本人の軍門に下ることを潔しとしない新日本人は、会社を去る場合も少なくないでしょう。実際のところこのようにして正論を貫き通した結果、会社を去ることになった新日本人はかなり多いはずです。わたしはその人たちに対して、「あなたがやったことは正しい、まちがっているのはあくまでも旧日本人の方だ!」と声を大にして申し上げたいと思います。