旧日本人の共同体的統治システム3
この仕組みでは、武士や政府はあくまでも天皇の威を借りて、「天皇の意志を実現するために自分たちが政治をしているのだ」という大義名分のもと、自分たちがやりたいことをやるというスタイルです。
実権を持つ者には、どこからもチェックが働いていないことに注意が必要です。天皇は実権者に対してよほどのことがなければ何も言いませんし、支配されている「民」の不満が高まってきたら、「まあまあ、そんなに不満ならお前を実権者階級に引き上げてやるから静かにしろ」という懐柔策があるのですから、これは実権を持つ支配者にとってはかなり都合のよい、スマートなシステムかもしれません。
ヨーロッパの王様の場合、王の権威は教会が認めなければ成り立ったなかったことに比べると、わが国の為政者はめいっぱいの実権を持っていたかもしれません。そこには王様と庶民という厳しい対立関係があるわけではなく、みんなが少しずつ実権を持つことによって利害対立がなあなあの形に融和されて、タコツボの中では「お互いがお互いにもたれ合う」という相互依存的な社会ができあがっていると思うのです