全体主義者のロジックとは
ここに右翼のロジックがとても純粋に表されている文書があるのでご紹介します。 今泉定助という神道思想家が書いた『天皇機関説を排撃す』という文書ですが、旧日本人を縛っている意識の根源は、この辺にあると思います。
「美濃部氏の根本思想は第一が独立なる個人が単位であって、その個人が相互に精神的又は物質的の交渉を有する生活を個人生活なりと為す個人主義思想、第二は人間の意思は本来無制限に自由なもので法に依って規律せらるると為す自由主義思想である。此の個人主義と自由主義とが一切の誤謬錯覚の根源であり、根本的な誤謬である。(中略)
日本思想の基調を為すものは自我の確立にあらずして彼我の一体、我境不二である。之れを皇道の絶対観、全体主義と云う。凡てがこの全体主義から出発するのである。故に人生生活に於いても全体的国家生活が本質的なもので、個人生活はその分派たるに過ぎない。人間は絶対無限の団体生活を営むものであって、この団体は中心分派帰一一体の原理によって統制せられ、個人がこの全体に帰入し、同化することが人生生活の真の意義と見る。これは日本思想である。この思想を表現したものが大和民族の霊魂観であって、万有同根、彼我一体、我境不二、中心分派帰一等の大原理がこれより流出するのである。これは宇宙の最高絶対の真理であって、世界無比、万国に卓絶せる大思想である。而してこの絶対性と普遍妥当性とは自然科学、精神科学上の無数の例示を以て証明せられる所である。(中略)
天皇は国家の中心であると共に、全体であらせられる。『原則として、天皇の命令に服するものではない』というが如きものは我が日本には一つもあり得ない。(司法省刑事局『思想研究資料』特集第53号(昭和14年2月より)
この精神がタコツボにこもって神輿を担いでいる旧日本人ビジネスマンにいまだに流れているとわたしは思います。天皇は一つも命令なんかしないのに、なぜ「自分は天皇の命令に服して行動している」と思えるのか不思議です。明治維新のときに明治天皇が「五箇条御誓文」において、「広ク会議ヲ興シ、万機公論ニ決スベシ」(国家の重要政策は国会で決めること)と表明した精神はどこかに飛んでいってしまいました。
【付記】わたしは「人間力」講座ではまず第一に、「あなたと他人は別の存在であるということを認識せよ」と強調しています。これがわからないと、まともなビジネスはできないですよ。