会社には天皇が宿っている
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 大魔神もそうですよね。あれ、農民の怒りが結集してるんじゃなかったでしたっけ。弱者のルサンチマンがたまると、抑圧者に対する反抗を弱者に代わってしてくれるものがなぜか登場するという。しかもそれは自分の意志で呼ぶのではなく、なぜか向こうからやってきてくれるわけです。便利ですねー。
飯坂 易姓革命の発想とは随分違いますね。
運営者 天命にしても、自発性はまったく見られない。意趣遺恨が閾値を超えたことだけを唯一の理由とする、理屈を超えた暴力的解決なんですね。秩序を否定し、暴力的に自分の意志を通す。自分の意志を通すための正当性は、「いじめられたから」という一事です。
「いじめられる」ということは正当性の根拠になるのかな。
飯坂 そもそも神風自体がナンセンスですからね。
運営者 神風を期待するのは、「われわれはいじめられているから」。あれは蒙古が攻めてきたわけであってわれわれが攻めて行ったわけではないですよね。
飯坂 ウルトラマンだって、怪獣は全部宇宙から攻めてくるわけであって、われわれが宇宙に攻めていったところで窮地に陥ってウルトラマンが助けてくれるという話じゃないですよね。
運営者 そう考えると、太平洋戦争において、神風が機能しなかった理由がなんとなくわかるような気がしますね。こちらから攻めて行くとダメなのかな。神風とは言いながら、「これちょっと違うんじゃないの」と思っていたのかも。やってた若者たちは真剣だったんですけどね。
飯坂 太平洋戦争は、欧米の経済包囲網が原因であって、それに対して大和魂で反抗していたというわけであって。
運営者 どんな戦争にも仕掛ける側には理由がありますよね。僕が言っているのは正当性でしてね。
飯坂 「やむにやまれぬ大和魂」は立派な正当性ですよ。日本というものそれ自体が根拠なんです。
運営者 そうなんですよね。しかしそれはまさに自分たちの神を措定した自己肥大的な発想です。そして他人を矮小化していく考え方です。それによって客観的な認識力が妨げられてしまう傾向がありますよね。したがってそのような認識に基づいて起こした行動が第三者から支持されることもないし、成功する確率も低くなってしまいます。
ではどうしてそのような論理がまかり通るんでしょうかね。
飯坂 それぞれの会社にもそれぞれの「天皇」がいるんですよ。会社には「天皇」が宿っているんです。それは、現人神である天皇がいなくなった後、個々の会社に分かれて散っていったんです。
運営者 ふーん、そうなんだ。それが会社天皇制の起源ですね。NECであれば関本天皇がいるとかは、住友銀行であれば堀田天皇がいるとか。