カイシャ天皇制「玉座を以って胸壁となし」
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 そのような「天皇」というのは絶対的な存在です。
運営者 神聖ニシテ侵スヘカラス。
飯坂 だからそれぞれの会社が北朝鮮なんです。どうやら最近飢餓状態にあるようですが(笑)。北朝鮮の飢餓と、旧日本的企業の飢餓というのは同じだと思いますよ。
運営者 そうするとよくニュース番組で「北朝鮮の最新映像を入手しました、可哀想な人々がいます」と言って流している、亡命者のビデオに結構人気があるのは、あれは他人事とは思えないからなんですね。会社人間の共感をすごく呼ぶわけですな。
飯坂 それから金日成の誕生日を祝うためにテポドン飛ばしたりするんです。
運営者 「これは社長のプロジェクトだから」ってやつですね。結構テポドン飛ばしてますね。あれお金かかるんですよね。
「社長のプロジェクトだから」というのに一体どれだけの正当性があるのか。儲からなければ何事にも正当性なんかないんですよ、本来はね。
飯坂 それはだって、南朝鮮や日本や米国が悪いんだもの。彼らが悪いから飢餓が起きるわけであって。どこかに悪者がいるから困ったことが起こるんです。亀甲占いや「みそぎ」の時代から少しも変わっていません。ご存知の通り「みそぎ」という言葉は現在でも使われています。ハングルでなんというかは知りませんが。
運営者 それに、テポドンの正当性なんか問題にしたら、「反革命的」ということになっちゃいますよね。こうなってくると、何が革命的なのかよくわかりませんな。
そうか、天皇を作るというのは便利なことなんですね。近寄りがたい存在、絶対不可侵の存在を押し立てるというのは何か効用があるんだな。
飯坂 統一された天皇が死んだら、それぞれの会社に天皇ができるだけの話ですよ。
それで天皇というのは最高権力であるが故に実権がないというのを実践しているのが役所ですよね。役所における神というのは、天照大神のようなもので、天の岩戸に閉じ込めて部外者にしてしまう。それで明治天皇の御真影のように飾っておくだけ。
運営者 天皇を作れば、物を考えなければならない煩わしさから解放されますよね。それは全然実際的な解決策にはなっていないのですが。
そして天皇には実権がなくて、ただの真空であり、空気のにおいを決めているぐらいのものでしかない。実際的な影響力はない。何か困ったことが起きたときにはかつぎ出して、海外侵略の正統性の根拠にしたり、あるいは自分たちでやりたいプロジェクトの言い訳として使うわけです。本当は自分がやりたいくせに、「ボクはこんなことやりたいわけじゃないんだけど、社長がやるって言うからさ」と、自分が自己責任を負うのを徹底して逃げるための方便に使っているのだと思います。やりたいことは天皇という実権のない権威が保証してくれるので失敗しても責任を問われることはない。何かヤバイことが起こったら、「天皇のために」とか「天皇の権威を守るために」といって、理屈を乗り越えて行動を起こす。ルールを破ることも何とも思わない。
つまり絶対権力者を作るということは、自分の言い分を通すための内輪の理屈を作るために非常に便利であるのだと思います。尾崎行雄の「玉座を以って胸壁となし、詔勅を以て弾丸に代へ」というのは、本質を突いていましたね。大正政変の時には代議制度が機能してたのになああぁぁ。