天皇の絶対権限が、各役所に降りている
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 そういう意識を持った組織人は、江戸時代においてはおそらく武士か、忠実な番頭さんぐらいしかいなかったわけで、その考え方が日本の国民一般に浸透した行動規範であったとは言えないでしょうね。「百姓根性」という言葉があるように、農民は獲れたコメをどこかに隠しておかなければ食っていくかできなかったわけです。
それは搾取があったからで、今だって日本の会計制度がこんなに不明朗なのは税務署のせいだと思いますよ。税務署が税法をガチガチに規定しておいて、さじ加減で税金を取れるようにしておいて、「いつでも取れるようにしているんだけれども全部取ったら企業経営が成り立たないからお目こぼしをしているんだよ」という形になっている。だから企業はごまかさなければならないことになってしまう。明朗会計にすると全部とられてしまって損ですからね。
税務署がしっかりとしたマニュアルに基づいて、「このマニュアル通りに課税しますよ」と天下に公言したら、まあ少しずつ治っていくんじゃない。
そうじゃなかったら、「企業はいったい何のために帳簿をつけているんだ」と思いますね。意味がないじゃないですか。どうしてメディアはそういうこと指摘しないんでしょうかね。
運営者 税務署の話も、裁判所の話も同じだと思いますね。だけどメディアが税務署に対してそんなことを書いたとしても絶対に税務署は動きませんからね。国民としては課税の判断基準を、毎週発行される「国税速報」で変えられたんではたまらないわけですよ。でもそれをやめてくれと言っても、税務署には効かないですよね。お上は「下々の言うことを聞くなど沽券にかかわる」と思ってますよ。
このピラミッド社会においては、沽券というのはかなり大切なものなんです。国家の藩屏たる官僚は、神を演じなければならないわけですから。
飯坂 天皇からの距離によって偉さが決まるんですよね。天皇に近ければ近いほど神を演じなければならない。
運営者 天皇の持っている絶対権限が、各役所に降りているわけですから。彼らはそのような正統意識をものすごく持ってますね。その正統意識というのは、憲法上は全く認められていないことのなのですが(笑)。
これが彼らの総ての動機になっていますね。
飯坂 正統性があると思っているからこそ、ああいう行動がとれるんでしょうね。役所の中で正統性を持っていると信じている人々は、学校を卒業してから役人以外の職業についたことのない人ばかりです。
運営者 それと、神を演じることができると信じているというのも、まったく非科学的なことだと思うんです。
飯坂 神を演じている人は、「神は死んだ」と思っているんでしょうか。
運営者 うーん、わかりませんね。そこの意識はぜひ知りたいところですね。
彼らの意識の中では、
「それはみんな官僚の悪口を言うよ、確かに官僚の中には悪い奴もいることは認めよう(決して自分ではないんですよ)、ただしおれたちが頑張らなかったら一体だれが最後の判断を下すというのか、政治家には決して任せることはできない、民間だって放っておいたら何をするかわからない、おれたちが最後に判断を下すから日本は持っているんだ」
と思っているんですよ。ホントは役所には、何の生産性もないんですけどね。不思議だ……。