いったいあなたたちは何を守っているんですか
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 神、すなわち空洞になった天皇からの距離によって権威が決まるわけですから、彼らも神を信じているんだと思いますよ。
運営者 天皇は象徴として空洞となったのですが、その持っている意味というのは官僚に対しては戦前と同じように機能していると。
飯坂 かつ、その空洞に対して責任をとる必要は全くないんです。けど、その空洞からの距離によって偉さが違うわけ。
運営者 内閣は天皇を補弼する位置づけでしたが、その総理大臣の秘書官を出していたのは大蔵省、通産省、外務省、警察庁。ですから彼らは「霞ヶ関の中でも一流官庁である」という自覚があったし、また実際優秀な人が入省していると言われていました。
それ以外の官僚も、少なくとも国民よりは空洞に近いところに座を占めているわけですね。だから、自分たちは責任をとる必要はないけれど、パンピーよりは偉いわけです。あくまで推測の範囲でしかありませんが、そういうことになるんだと思いますね。
従って「自分たちの判断はいかなるものであろうとも正当性があるから、ハンセン病の患者であろうと、血液製剤の輸入に関する判断であろうと、われわれが下した判断は他の誰が下した判断よりも正しい」と思っているわけで。
飯坂 「確かにハンセン病の患者はかわいそうだし助けてあげたい」と思っている。しかしそれよりも大切なものを彼らは守る必要があったんでしょう。
運営者 なるほど権威を曲げることによって自分たちが失うものを考えれば、とんでもないことになってしまうと判断できるわけですね。
飯坂 というよりも、「天皇陛下に対して申し訳がない」とまでは言わないものの、「空洞になっている我々を支えているものに対して申しわけがない」と。
運営者 だから聞いてみたいと思いますよ彼らに、「いったいあなたたちは何を守っているんですか」と。
飯坂 それを明らかにしないということが都合がいいわけじゃないですか。
運営者 あっ、そうか。でもそれって何なのかな。
神社って、御神体は鏡を置いてあるだけだったり、中身がなかったりするじゃないですか。
飯坂 お守りを開けてみたら中には何も入ってないし。
運営者 でもそれがありがたいと思っている、それが日本人の心を支えている。
飯坂 「イワシの頭も信心から」なんて諺のある国は、他にはないと思いますよ。多分ないんじゃないのかな。
運営者 他の国の宗教がご神体としているものは、もっと実体的なもんなんですかね。仏教だったら最初は釈迦の骨だったんですよ。それをアショカ王が8万8000個に砕いて、インド中に仏塔を立てた。それが五重の塔の起源です。だから初期の天王寺様式では、塔が伽藍の中心に配置されていて、信仰の中心となっています。