小泉改革は必然的な自立への道
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 小泉改革が始まったときに、「小泉こそ自分たちが従うべき新しい神だ」と思っていた人たちもいるということですね。
飯坂 そちらの方が多いと思いますよ。
運営者 そこはものすごく危険なことであって、小泉首相自身も、「それじゃいけないんだよ、あなたたち自身が自立しなければならないんだよ」と投げかけているわけですが。、
飯坂 そこはやっぱり、小泉首相自身が自立することを余儀なくされてきたからなんでしょうね。
運営者 そこなんですよ。森首相は、ブレーンがいなかったですからね。小泉首相は森派を支える立場にあったわけですから。
去年の秋の第二次森政権誕生の時に、竹中平蔵さんに「郵政大臣兼IT担当相で入閣をしてくれないか」と入閣要請に来たのは、小泉さんだったんです。その前にも一度話があったはず。竹中さんはそれは断ったわけですが、「入閣するのではなく、政策を作るための首相のタスクフォースとして協力しましょう」ということになった。それ以降の森首相の施政方針演説というのは、竹中さんたち学者グループが作っていたんです。
で、これというのは革命的なことなんです。霞ヶ関がこれまでやってきた仕事を、民間人がパクちゃったわけですから。霞ヶ関的にも、それまではそんなことを民間人ができるなんてだれも考えていなかったわけです。ところがホントにやっちゃったわけ。
小泉さんが自民党総裁選に立ったときも、竹中さんは政策のペーパーを渡していたということは一部で報道されていますね。それは事実でして、そのように竹中さんは政策マインドが非常に強い学者ではありますが、べつに一足飛びに大臣になったわけではなくて、段階的に準備期間があったものと考えていいのではないかと思うんです。それと、小泉さんの立場というのがうまく一致したしたんでしょうね。
僕は、小泉構造改革については、竹中さんの下で政策提言をつくったということもあって、あまり論評できる立場にはないと思っています。僕の考え方が竹中さんと似通っているからプロジェクト・リーダーに選ばれたということがあると思いますのでそこは割り引いて聞いていただいてもいいんですけれど、日本の現状を解決する政策としては、あれ以外の方向性があるとは私には考えられないんです。他にあるんだったら、ぜひ教えて欲しいですよね。
やらなければならないことは、市場原理を徹底すること、財政を健全化するということ、税金の無駄遣いをやめて、予算配分も弾力化すること、もっと経済観念と競争の原理を行政に取り入れること、特殊法人を改革すること、行政に透明性を持たせること、そうやってより効率的な国家の運営を行うこと、規制改革を中心にして民間の活力を引き出すこと、年金などについては破綻が見えているわけだから早急に解決の方向を見出すこと、二階部分の民営化しかないと思うんですけどね。地方にも自主財源を分け与えて中央集権的な支配を排除するということも、結果的には効率化に結び付くはずです。教育以外に関しては、これ以外の方向性というのは考えられないと思うんです。
だから、こうした旧勢力の封建的支配に対抗し、実権を本来持つべき市民の手に取り戻すための公正な市場的ルールの実現を主張する動きに対しては、新しい名前をつけてこれまでの政策と区別しようという動きすらないではないですか。ちょっと前であれば、守旧派vs改革派と呼ばれていましたが、もう既にこの区分すらない状況になっているということですよ。
現状進行している、国家財政の破綻と民間活力の阻害の進行を食い止め、より望ましいルールを適用して、それに合わせて人の意識を徐々に変えていく、これ以外の道は考えられないでしょう。