優秀な人材は
価値を生み出すセクターに配置せよ
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 あと、いらない公益法人を作ったり。いらない資格や報奨制度を作ったり。全部いりませんよ、はっきり言って。中央省庁なんかいらないですよ。どこに必要性があるんだ、いったい。
飯坂 財団法人=トラスト(信託)でしょう。何でトラストに認可が必要なの。
運営者 お上が認可しないとトラストは信用ができないからなんでしょうね。しかしそれは、トラストの本質的な否定ですよ(笑)。
飯坂 この前ね、ある人の名刺の肩書が米国財団法人「国際なんとかセンター」と書いてあったんですよ。単なるトラストなんだろうけど、それを財団法人と翻訳したところがミソですよね。うまいところに目をつけた人間がいるなと。
運営者 なるほどね、悪人は頭が働くんですよ。まあ、トラストの概念自体が日本にはないし、法律でも認められていませんからね。
それからね、公務員制度改革についていうと、「一括採用」という考え方が完全に否定されているんです。人事については各省庁が行うということで方針が徹底されてしまいました。
これは日本経済研究センターの八代さんも支持を表明していましたね。僕は彼の考え方にはほぼ賛成なんですけど、こればかりは反対です。そもそも各省庁が採用を行うということが、省庁縦割りの根本的な原因なんです。これがもたらした弊害がどれほど大きいことか。だって結局、天下り先を決めるのは所属していた役所になるわけですから、自分の属している省庁に対する忠義立ては他のありとあらゆる公的な要請に優先するわけですよ。
友人にこれについて話したら、「一括採用をやってしまうと霞ヶ関に優秀な人材が来なくなってしまうんだ」と言ってました。そこがポイントだと思うんですね。私は、優秀な人材は国家的な資源なのだから、それを役所のような非生産的なセクターに振り向けるのではなく、もっと価値を生み出す可能性が高いところに配置するべきだと思うわけです。それが経済的な発想だと思うんですよ。
僕は役所というのは、人間の体で言うと盲腸のようなもんなんだと思っています。今はなくてもすむ存在になっています。しかし、再度、彼らの役割が高まる局面が来る可能性も否定できません。そのときは柔軟に人材を再配置すればよいのではないかと思うのです。まあ、もしそんなことになったら日本はアジア諸国の単なる一国に落ち込んで、再び這い上がることはできないでしょうがね。
飯坂 だったらね、公務員の範囲を拡大してどんどん増やしちゃえばいいですよ。それで、予備役にしてしまうんです。「クビじゃあ不安でしょうから、公務員の籍だけは残しておいてあげますよ」と国が身分を保証するというのはどうでしょう。
運営者 どのような身分でも、国が保証するということ自体がナンセンスだと思います。
飯坂 役人は国の身分保証がないと自分が自分でなくなってしまうと考えますよ。Ⅰ種試験に合格した人は資格保持者として、民間に就職してもいつでも任官できるようにするとか。そうしたら今は官僚になる気はないと言う人も試験だけ合格しておけば、実務経験を積んでから任官して国に貢献する機会も出てくる。
運営者 それでアドホックに、内閣の指名と、国会の承認があればいいんだと思いますよ。
飯坂 政治任用はずいぶん大変な手間だと思いますが。とにかく公務員制度についても改革するしかないわけですね。
運営者 何のための改革かということはよく分からないのですが、とりあえず、改革するということらしいです。