中間層以下の人たちは改革をどう受け取るか
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 バランス感覚ですか。
いまわれわれの目の前で起こっていることは、そういった正常なバランス感覚を狂わせることばかりなんですよ。例えばお台場というところは赤字の海の上に浮かんでいるわけでして、そこに日本科学未来館という立派な建物ができて、毛利という人が館長をやっているわけです。
飯坂 あれもひどいね。
運営者 これを何百億という金をかけて作る意味があるのかどうか。それからこれができたら、北の丸の科学技術館は閉鎖するのかといったら、そうではないと。スクラップ・アンド・ビルドしなくて、効果があるのかどうかさっぱりわからないものが次々とできあがっていく……。
飯坂 僕はいくつあってももいいと思いますよ。ただそれを、日本のスミソニアンにすることができるのかどうかということですよ。あのクオリティーができるんだったら税金何百億使ってもいいや。
運営者 だけどね飯坂さん、スミソニアンは税金使ってないんだから。
いまだに「日本を文化芸術立国にする」なんて言ってる政党もありますからね。はっきり言うけど、あんたらには無理だ。
飯坂 あのたぐいの箱モノのキーワードは決まって「子供たち」とか「未来」とかです。科学館に行って科学者・技術者を志し、メーカーに勤めて輸出をバリバリやって日本を豊かにしなさいってか。理系離れの原因はそんなもので解消するわけはないのにね。
理系離れの原因は創意工夫をする人間が報われなくて、規制を作ってその上前をはねる人間の方がおいしいって親の目にも子供の目にもわかるからです。ま、我々自身がそういう社会を望んでいるということなのでしょう。
いずれにしても、お題目の時代は終わりました。
運営者 お題目の時代が終わっても、科学未来館が建つんです。
飯坂 これはやっぱり、日本人は自立するの無理かもよ。
運営者 僕は楽観してませんよ。というか悲観してますよ。
飯坂 みんな平等主義を捨てるということを許容できるのかなぁ。かといって、全員が神を捨ててしまうのも困るし。
運営者 いいセン突いてますよね。日本が新しい国に脱皮したとしても、社会の6割方を占める中間層の人たちは、アパークラスの人たちが作った価値を盲信するしかないはずなんです。盲信するだけなんです。
だから、どんなにいい改革案が出てきたとしても、それを自分の頭で判断するのではないわけですから、常に不信感が入り込むスキがあるということです。
また下層の2割の部分の人は、どのような価値観が元のもになってできたシステムがとって変わろうとも、基本的にはその規範からははみ出してしまうことになるわけです。それはどのような価値観だろうと彼らの行動は同じでしょう。
それだけのことですから、考えてみると中間層以下の人たちにとってみれば、新日本国への移行ということは、新しい神を作ることにほかならない、そう受け取られても仕方がないわけですね。
飯坂 そうですね。