ポイントは
自立的な発想、自発的な行動ができるか
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 結局ね、新日本人的に自立するということは、資本から利潤を生み出せるまともな企業を作るということなんだと思います。
小泉首相は現在、「特殊法人や行政の中には非常に無駄が多いから、小泉改革ではその部分を直そうとするんだよ」という言い方をしています。だけど、政府がGDPの中に占めている割合は3割でしょう。それよりも、精神的な支配や、規制による支配の方が民間企業の行動に与えている影響は大きいと思うんです。だから政府支出の部分をどうこうしたからといって、実質的な影響はあまりない、と思います。
本来の、民間企業が利潤をあげ、拡大再生産していけるような仕組みを取り戻すことができるかどうか、それが一番重要なことだと思います。
飯坂 一番きついのは、人材の面ですよね。
運営者 僕はね、人間は変わることができると思うんですよ。
飯坂 受けた教育の内容は、すぐに入れ替えることはできないよ。それから個人でも企業でも地位や利権を確立しさえすれば後は安心、っていうスタティックな行動様式も。
運営者 でもね、リベラルアーツと言われるようなものは、実はほとんどの人は勉強しなくても生きていけるものなんですよ。
仕事をやっていくために必要な最低限のノウハウというのは、ほんのちょっとしかないんです。だからとりあえず当座必要な知識を身につければ、仕事のやり方を変えていくことは可能なんだと思うんです。ビジネスマインドと、ネットワーク能力だけを身につければ、その他に必要なその仕事特有のスキルやナレッジというのはそんなに多くないでしょう。
ポイントは、自立的な発想、自発的な行動ができるかどうかだと思いますよ。だから、そこのところの動機づけ、意識づけが一番重要でしょう。
飯坂 そのうえで、各人が自由な発想や行動ができるようになった結果生じた不整合やフリクションは、そうなっていれば十分吸収できるでしょうからね。
運営者 そうなっていれば、正当な事業活動からフリクションを吸収できるだけの利潤が上がるはずですからね。
それで、確かに人間関係は今までよりギスギスするようになると思いますよ。ちゃんと個人の業績評価をやるようになりますし、コーポレート・ガヴァナンスでも今までのように儲かった金を全部余剰金に積み上げて、株主の目の届かないところで自由に使うということもできなくなりますし、それどころか外部取締役や監査役会によって、役員はかなり縛りを受けるようになりますね。
だけど、過去の旧日本に戻ってしまわないためにはそのような、外部的なチェック機構というのは必ず必要ですし、「ルールを遵守する」とか、「規範を守る」とか、「社会のために」と言った、いままではお題目として軽蔑していたことをきちんと追求するようにならなければ、それを破ってしまったら自分の側が必ず不利益を被るんですよ。だからそういうコストを払わなければならないんです。
未だにこれが理解できないバカモノが多すぎますね。でもそういうコストをいやいやながらでも払った方が、必ずや、仲間主義でなあなあでやっていた時代よりも利潤を生めるようになるはずなんです。どうしてわからないのかなあ……。