国債チキンレース
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 都市と地方の問題をどう考えるべきかなんですけど。
公共事業を地方にばらまいて、その金は預金として地方の金融機関に預けられるんですが、結局中央のゼネコンに還流したり、地元に落ちても地方では運用のしようがないので中央に循環してきて、その金で国債を買うという構造になっています。なんせ、銀行が貸し出しなどをやっていると、与信リスクを判断する能力がないので、たちまちのうちに不良債権の山になってしまいますからね。だから国債による景気対策で地方に資金循環するわけで、その結果が国家財政の累積赤字ということで、これによって少なくとも不良債権の顕在化の引き延ばしには成功しましたよね。
結局、どちらにしても資本効率が良くないわけですが。
まったくお話にならないですよね。
そして問題は、金融機関の側が、「これ以外の仕事の方法は考えられない」と思ってることだと思うんです。そうではない方法を見い出して(外資に教えてもらって)、そちらに移るようにするか、「やっぱりこれはわれわれ銀行の手には余る」と潔く認めて、資本の担い手の座を去っていただくか、どちらかにしなければ、われわれには未来はないでしょう。
恥ずかしいと思わないのかね。
飯坂 でも 、彼らに「今までのやり方と違うことをやれ」と言ってもできないわけですから、「トライしたら失敗してクビになってしまう」と考えるでしょう。だから今のやり方を続けるわけです。恥ずかしいと言われようがどうしようが。
運営者 だけど、もし僕がそうした形でしか社会の建設に参加できないのであるならば、とっとと辞めて他の道を探しますよね。そんな生産性の低いことやっていたって全く意味ないじゃないですか。
飯坂 それは正常な考え方だと思います。
運営者 これから起こってくることは、修羅場の中に突入して、結局いつ辞めようかと決断するということです。
沈みかけているタイタニックに乗っていて、「沈んだ後の渦に巻き込まれないようにするためにいつ海の中に飛び込むか」ということをギリギリの状況の中で判断することを迫られるのだと思いますよ。
水の中に飛び込んでから、先に飛び込んだ連中と肩を寄せ合って、木切れでも集めていかだでも作れる可能性も若干はある、というところまで来ちゃったわけですから。
飯坂 今のところ、回転がすべて悪い方向へ悪い方向へと回っているので、その回転を根本的にいい方向に変えてやる必要がありますよね。海の中に飛び込んでいかだを作ることも出来るかもしれませんが、それは言ってみれば「日本人の中で優秀な、どこに出しても通用する奴は、外国に出て行ってユダヤ人みたいになって稼げ」と言っているようなもんですよ。
それは、問題の本質的な解決にはならない。
運営者 や、しかしね、どうせこのタイタニックは沈むんですよ。だってあんな銀行みたいな生産性の低いセクターがね、社会全体の資本の流れのうちの7割を占めているっていうことは、明らかに成長性を失った経済システムであるという証拠なんですから。これを続けていく限り、絶対に発展の目はないわけですよ。銀行にしても、もう先細りしかないですよ。含み益はすべて吐き出して、もう売る物はないわけですから。
飯坂 国債が残ってますよ。
運営者 国債は、だって……。大暴落ですよ。
飯坂 だれが最初に売るか。国債チキンレースですな。最悪のシナリオは、金利が急騰して円高になること。
運営者 恐ろしいな、それは。