真のセーフティーネットは、
金がもらえることではない
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 まあ、どちらにしても行き詰まるでしょう、そうするとどうなるか。失業者が大量に発生します。その失業者をまとめて、新しい仕事を始める人材、リーダーになることができる人材、すなわち起業家であり経営者が必要なんです。
ところが世の中、(くそ面白くもないこのサイトを読んでいるような)まともな人間は数が少ないです。自分で事業を起こして成功できる人間というのは、どうしても1セットになったセンスと、経験が必要なんです。そういう人はなかなかいません。いないけれども、そういう人をつくっていかなければならない。
世の中の7割方の人間は、他人についていく以外の生き方は知らないわけですから。そこが、平等意識が残っていると、どうしようもなくなるところなんですけど。優秀な人材を発見したら、そいつを選抜して、知識を与えて育ててやって、リーダーとしてやっていく人間を戦略的につくっていかなければならないでしょう。
僕が住んでいる石川島というところは、長谷川平蔵がつくった人足寄場があったところです。当時江戸には何万人もの無宿人がいて、彼らをこの島に送り込んで仕事を覚えさせ、その中でもマネジメント能力のある奴にはまとまった金を与え、人を雇わせて商売をやらせたらしいです。
そうやって、自立して再生産していくユニットを如何にして作っていくか。
あるいは明治時代には、田舎で優秀な小学校の子供がいると聞くと、篤志家が奨学金を出して教育を受けさせ、人材として育成するという話がありますよね。
「改革、改革」とみんな叫んでいますが、本当にその辺り、必要な人材をどうやってつくるべきかみんな考えているのかなと不思議に思います。ベンチャー企業なんか、なかなか成功しませんよ。
実は、真のセーフティーネットというのは、国から金がもらえることではないわけですよ。
飯坂 そうですねえ。セーフティーネットを必要とする人たちは、今までもカイシャから金を「もらって」生きてきた人が多いでしょうからねえ。
運営者 資本を元にして利潤をあげることができるシステムを、自分で作ってそれを運営し続けていくことができるか。もしできるんであれば、それは恒久的なセーフティーネットですよ。
飯坂 あのね、非常にひどい言い方だとはと思うんだけど、年配の人がリストラされて苦しんでいるのを見ているからこそ、若い人は頑張るんですよ。
運営者 中高年は、彼らなりに頑張った末にああなっているわけだから。
飯坂 「ああいう考え方じゃあ違うんだな」ということを学習するわけです。自分のおやじのやり方じゃだめなんだ、と。だから、セーフティーネットを充実させて、みんながそのおかげでハッピーになってしまったら、その後の成長はないかもしれない。「仕事はないけれど、ハッピーである」という形にならなければ、みんな程度の低い社会保障をセーフティーネットとは認めないはずですからね。いわゆるモラルハザードです。