■保守主義・前例主義・拝外主義 / 変革志向性・危機意識
おやじ ああ上等だよ。オレたちにとって大切なのは、やはり仲間と一緒に守り続けている組織の秩序なんだから、それで十分さ。アカの他人の意見なんか欲しくないね。前例主義と言うが、前例は理由があってそうなっているんだから、それを続けておけばまちがいないんだよ。
基本的には先輩から受け継いだものを何も変えずに、そのまんま後輩に渡せばいいんだ。何かを足したり引いたりする必要などどこにもない。
若造 世の中がどんどん変わっているのに?
おやじ そうだ。しょせんこの変化は表面的なものだ。
若造 お客さんに迷惑をかけているのに?
私おやじ 迷惑なんかかけていないし、お客は満足してるはずだぞ。
若造 会社がつぶれかけているのに?
おやじ それは困るな。会社をつぶさないために今までのやり方を守るんだから。
若造 そこに矛盾があると思うんだけど。生き残りたいのなら、変わっていく以外に道はないんだよ。なぜなら、会社をとりまく世の中全体が変わっているんだから。そして会社は世の中から独立して生きていくことはできないんだから。
会社を取り巻いている現状は常にヤバイんだよ。われわれは「いつもピンチ」に置かれてるんだ。だから新しい知識を勉強して、自分から進んで変身していかなければならないはずなんだ。
「これでいい」ということはあり得ない。極まることはないんだから、常に向上していかないとね。
おやじ いや、オレの目の黒いうちは、何も変えさせないぞ。日本企業の場合は、一人でも反対者がいる限りは物事は動かないからな。そのくらい秩序というのは大切なものなんだ。
若造 内閣の閣議も大学の教授会も全員一致が原則だからね。「変わりたくない」という意識が制度に盛り込まれているようだな。それはおそらく、今までのやり方を変えるのは苦痛なこともあるけど、前任者がやってきたことを否定したり、下手をすると責任をとらせることになるからであり、また一度決めたことをひっくり返したり引き返したりするのは、リーダーの完璧性を否定することになるから、旧日本型組織の秩序を脅かすとみなされるんだろうな。
だけど、新しい価値を創り出すことは、変身することとイコールなんだけど。
「石にかじりついてでも変わりたくない」と言うのであれば、これ以上何も言うことはないね。