■自己目的化・権威の高揚 / 自立した個人として社会に参加
おやじ しかし、会社から与えられる目標をクリアするだけでも大変なんだぞ。それはだって、お前たちの教育のことも考えなければならないし、両親の介護はあるし、いろいろ忙しいからな。だけどオレは、家族と会社に対してだけは責任を果たしてきたと思ってるよ。
若造 おふくろが聞いたら納得しないと思うけどな。何かというと「会社が忙しい」と言って逃げ回ってたじゃないか。
おやじ 今のは撤回する。
若造 だいたい、「会社のために」と二言目には言うけれど、働いている目的をなんだと思っているわけ?
おやじ 目的って……、だからそれは、「会社のため」だよ。
若造 実のところは、旧日本人の人たちは、「自分と会社の関係を維持すること」しか考えてないから、目的なんかどうでもいいんだよね。はっきり言って、給料さえもらえれば、働くことに目的はないんじゃないの。
おやじ 給料は大事だろ。お前だって会社からもらった給料のおかげで大学まで卒業できたんだし。それ以上に大事なものがあるのか? まったく感謝の気持ちがない奴だな。人間性に問題を感じるぞ。
若造 そりゃ、大学まで出してもらえたのはありがたいと思ってるよ。もう激しく感謝してるよ。だけど、それと「給料以上に大事なものがある」というのはまったくの別問題だと思ってもらわないと。働く目的について話してるんだから。ぼくは給料以上に大事なものがあると思ってるけどね。
だけどそれは置いといて、「自分と会社」という関係性しか考えていないと、仕事先である顧客とか、本来の会社のオーナーである株主の利益が見失われてしまうよね。そうすると、会社が儲からなくなるのは当然だと思わない?
おやじ じゃあお前は、働く目的とか、会社の目的は何だと思ってるんだ。
若造 ぼくが働く目的は、自分が働くことで、新しい付加価値を創り出し、それをお客さんに買ってもらうことで、自分が世の中につながっていくという実感を持つためだね。報酬はその対価であって、最大の目的じゃないと思うんだけど。
そして、会社はその舞台なんだけど、株式会社の場合は、株主に対して毎年配当を出さなければならないし、新しい資本を呼び込むためにも株価を常に上げ続ける必要があるので、会社の本来の目的は儲けを出すことになるはずだよ。良い品をつくってお客さんに喜んでもらい、会社も儲かるという循環をつくるように努力すべきだと思うね。