■社会全体より組織が上位 / 組織より社会が上位
おやじ しかしわれわれは、会社に対する揺るぎない忠誠心を持ってるぞ。会社のためにはかなり頑張りがきくんだ。この忠誠心が今までの日本企業ひいては日本経済を支えてきたわけだから。
全身全霊を打ち込み、打って一丸となることでわれわれはここまで来れたんだぞ。
若造 忠誠心で目が曇って、会社を客観視できなくなっているところが問題だよね。仲間や上司を批判できないということは、「会社に言われたことはすべて受け容れなければならない」と思っている。それは非常に危険なことで、会社の現状や、会社側の主張を、お客さんや社会の側に立って批判的に検証できないと、問題が起こっても小さなうちにつぶせずに、雪印や三菱自動車のように全社に致命的なダメージを与えるほど問題を大きくしてしまうことがある。
おやじ あれはかなり異常だよ、あそこまではなかなかいかないだろう。
若造 でも、「雪印とうちの会社の間にはっきりとした境目があるか?」と考えると、ぼくはないと思うね。結局、社員が会社に魂を売り渡してしまっている会社は、いつ雪印になってもおかしくないはずだよ。
目的もなく、ただなんとなく社員を乗せて暗い海の上を漂っている会社の中で、社員は会社の中の人たちだけと仲良くしていればいいわけだから、だんだん周りの世間とずれれてくるよね。
旧日本人は「自分たちがつくった組織の中のルールや論理」と、「世の中一般で正しいとされていること」の間に板挟みになったときに、どちらを優先するかな?
おやじ それはまあ、仲間のメンツをつぶすわけにはいかないから、とりあえずは会社の中のルールを優先するよ。仲間のために利益にならないことをやったって仕方がないじゃないか。
問題が起こったら、後で訂正すればいい。そのへんはちゃんと、考えている。
若造 つまり結局のところ、旧日本人の意識の中では、社会全体よりも自分が勤めている会社の方を優先しているということだよ。
おやじ 当たり前じゃないか。それはいけないことなのか? みんなそうしてるじゃないか。給料がもらえないと意味がないし、会社が良くなれば、世の中もよくなるんだから、全然問題ないぞ。
若造 ところが大ありさ。早い話が、会社にぶら下がっている旧日本人は、社会に対してもぶら下がり意識を持っているということだよ。