組織観■
■現状肯定 / 合目的的組織観
おやじ 会社ってえのは、とりあえずは、われわれの居場所なんだよ。
若造 あのねえ、本当のことを言うと、会社って利益を追求するところなんだよ。決して社員が人生を共にするための「生活共同体」じゃないんだよ。
おやじ ほう、そういう新しい考え方が出てきたかね。でもそれはうちの会社ではないな。
若造 違うんだって、さっきの繰り返しになるけど、株式会社である以上は、みんな利益を上げ続けなければならないことになってるの。
どうしてかというと、利益を上げないと株価が下がるし、オーナーである株主はそれを望んでいないからね。
おやじ そんなことをうちの会社で言っても、誰も信じないぞ。オレも信じないけど。
若造 困ったな。でも「会社の目的は利益を追求することだし、株主や会社からはそのために働くことを期待されている」ということを理解してもらわないと、この後の話がさっぱり通じないので、頼むからそういうことにしておいてもらえないかなあ。
おやじ 頼まれれば仕方がないな、じゃあそういうことにしておいてやろう。これは貸しだぞ。
若造 やれやれバカバカしいな。資本主義のそもそもの前提が通じないんだから。
企業というのは、利益を出すためにあるのだから、そこで働いているぼくたちの仕事はその事業目的の達成のために割り振られているのであって、その役割さえ果たせばそれでよし。それ以上余計に組織にかかわり合う必要なんかないはずなんだよ。
ところが、旧日本人が本当に「会社組織というのは、自分が生活する場以外の何物でもない」と信じ込んでいるとすると、あくせく働いて利益を出す必要なんかないということになるよね。そこに居られればいいということなら、そこに居るための義務を果たすだけですむわけだから。
「会社に居続けるためには利益を上げなければならない」ということになると、みんな目の色変えて働くはずだけど、社員が「会社の目的は利益追求ではない」と思い込んでいれば、だれもお客さんのことを考えて仕事をしようとか、もっと儲かる新しい仕事を創り出そうとか考えるはずがないじゃない。「会社は利益追求集団である」という当たり前の現実を、ほとんどの人が認識していないという現状が、会社が儲からない根本的な原因だろうな。
経済環境が変化して、今まで提供していた商品やサービスが売れなくなってきたとしても、「儲けなければ」と思っていなければ、それまでのやり方を変えて新しいものを創り出すなんてできないよね。