■地位固執・出世主義 / 組織相対主義2
若造 あーあ、そもそも無能な人間が出世し過ぎだよ。猫も杓子も課長になっちゃうんだから。ウチの役員なんか、「あいつも可哀想だから課長くらいにはしてやろう」って言ってるもんね。課長というのは、かわいそうだからするものじゃないだろう。部下の立場になってくれよまったく。苦労するのはこっちなんだから。
おやじ みんな仲良く暮らすためには、同期で一人だけ課長になれない人がいるのはまずいだろう。社宅で奥さんが同期の人の奥さんに会わせる顔がないじゃないか。
若造 「顔、顔」って、メンツと仕事の能力とはまったく関係ないじゃないか。
昇進したいからって、上司の家の引っ越しを手伝ったり、お中元やお歳暮を贈るのは見苦しいからやめてほしいな。ぼくの知ってる部長なんて、業績が悪くて降格されるのがいやで、社長に土下座までしたってんだから、恥を知らないよね。それで地位を維持して部下に威張ったって、誰も言うことなんかきかないのに。いったい仕事ができなければ、それなりの処遇変化があるのは当然だと考えられないんだろうか?
おやじ そういう考え方がまちがってんだよ。偉い人間は、それなりに偉いということにしておくのが、組織運営を円滑にするコツなんだ。
若造 そうすると何が問題になるかというと、「地位が上の人間は、能力を問われることがない」ことになっちゃう。だけど現実的に、ビジネス能力のない人間は、どんなに頑張ってもやっぱりできないんだよ。
だから悪いけれど、その地位には他の人に座ってもらう必要があるわけ。その人がその地位になければ困るのは、実力不相応の地位を獲得した本人と、彼に人事上の貸しをつくって仲間になってほしいと思っている社内政治が大好きな人事権者だけだろ。そうやって実力のない人間に貸しをつくって政治力を高めていく人間が多いすぎるよ。
だけどいくら社内政治をやっても儲けにはつながらないんだよ。価値の創造につながらないことは、やるだけムダ。そんなことで組織の競争力が失われていくなんて、目も当てられないよ。私物化以外の何でもないじゃないか。