■徒党を組み、敵味方を分けたがる / 会社は他者との共働の場3
若造 それに「あいつはちょっと変わっているが、おもしろいアイデアを持っている奴だ。あのバカにやらせてみよう」という、自分が持たない才能にやらせてみる発想もないよね。きっと相手が自分の完全な支配下にいないと信用できないからなんだな。
おやじ 他にも日本企業には、いろいろと便利なことがあるんだぞ。身内ほどありがたいものはないんだ。身内のネットワークは、会社の外までつながっているんだからな。
若造 会社の外にまでつながっている身内ってのは、企業系列のことだね。コネ採用というのも、身内優先ということだし。でもそれは、現状を安定させるための単なる談合でしかないと思うね。
ベンチャー企業がどんなに安くてよい製品をつくっても、日本企業は買おうとはしない。品質が劣っても、高くても、ブランド力のある大企業の商品しか買おうとしないのも旧日本人の保守的な態度の表れだよ。だけどそれは組織の論理を延長した、「競争制限」的発想なんだよね。それによって、自分たちの安定を脅かす新しい若い力を抑えつけて、自分たちの身が安全になったように思うんだけれど、本当は自分の首を自分で絞めているんだ。
おやじ かもしれん、だけど会社はつぶれないんだ。
若造 そうやって、大企業が下請け構造のピラミッドの頂点であぐらをかくという「身内資本主義」をやって、市場競争を否定してきたから日本企業の対外競争力はどんどん低下して行ったんだよ。日本は「タコツボ社会」だってんだよ。
努力をせずに、競争に勝てるはずがないじゃない。勝つためには、まず自分を磨くこと。ぼくたちは自分自身が自立して、頑張って仕事をした結果を、公正な市場において売り買い交換して、社会全体の効率性をどんどん高めていく努力をしなければならなかったんだ。それをさぼっていて、今になって「アジアに負ける、中国に負ける、どうしたらいいんだ?」と騒いだって後の祭りだよね。まったく賢いもんだよ。
テレビでニュースを見ていたら、中国のネギ農家の人にまで、「日本が中国産のネギに関税をかけているのは、日本の消費者の利益にとってマイナスだ」なんて言われてるんだよ。どちらが自由主義経済の国だかわかったもんじゃないよね。
日本には、どんどん社会主義的、統制経済的な方向に向かおうとする流れがある。それを引っ張っているのは、自分たち自身の弱さだと思うんだ。それはあまりにもまずい。市場主義を徹底する方向に社会のシステムを組み直さなければ、日本の没落の流れをとどめることはできないと思うよ。