■向上心なし / 価値志向性2
若造 そして重要なことは、そういう「会社に対する甘えの感情」が強い人は、仕事に対する「向上心」がないということ。旧日本人は仕事に関する目的意識がないから、会社を「自分の居心地の良い居場所にしたい」と考えるだろう。
だけど変化する状況に常に先回りして、先手先手を打っていかないと、ビジネスに負けちゃう。そのために必要な先見性を支える能力として、向上心というのはかなり重要な能力だと思うよ。
旧日本人は、「とりあえず現状のままでいられれば問題はないに等しい」という発想法なわけだから。だけど一皮めくると、風船はどんどんふくらんでんいるんだけど、あえてそれからは目をそむけようとする。向上心を持っていないと、問題が起こったときに状況を先送りする対応しかできないよね。そして問題が大きくなったときに、「なんとかしなきゃ」と対応策を場当たり的に小出しにする。たいていは資源を小出しにする「兵力の逐次的投入」をやって、なけなしの資源を失っちゃうんだよね。だんだん資源の余裕がなくなって、精神的にもパニックに陥って、結局つぶれちゃうことになるんだよ。旧日本軍の行動を見ても、経済政策を見ても、だいたいこのパターンだね。完全に受け身に立ってしまうんだ。
だけどほんとは、自分が変化をリードする側に立たなければ、危なげない有利な勝負はできないんだよ。常に前向きで、自分からリスクを取っていく態度がないとね。
おやじ しかし、そこまで会社や仲間のことをないがしろにする必要はないじゃないか。会社に居られるというのは、繰り返すがすばらしいことだぞ。クビにならない程度にやっていれば給料が毎月もらえるんだから。
若造 だけどさ、会社の権威にぶら下がっている旧日本人は勘違いして「自分と会社は一体だ」と思っているので、すごく自己中心的な発想している人が多いように思うんだ。
自分中心に仕事していると、顧客の本当のニーズを汲み取れないし、「とにかく仕事の結果さえ出せればいいだろう」というぞんざいな仕事を、お役所的にやってしまう人が多いんじゃないかな?
おやじ それでも、給料がもらえる。家族を養える。
若造 本当にそれでいいんだろうか。ぼくは「自分がやってる仕事の本当の意味は何なのか」を、もっと深く知りたいと思うけどな。仕事のことも知りたいし、お客さんのことももっと知りたい。「人間は何を求めて生きるのか」を考えたいよね。だから「もっと勉強したい、知識を増やしたい」と思うんだけど。
おやじ そんなことをしても、目の前の仕事にはほとんど何の足しにもならないぞ。
仕事に必要なものはすべて会社が用意してくれるんだから、それを使ってひたすら頑張れば、他には何もいらないはずだろう。
若造 そういう主張をする上司は、勉強している人がいると仲間外れにしようとするね。結局旧日本人にとっては「これまでの組織文化を守る」「これまでの職場環境を守る」ことが彼自身の生活と面目を保証するから、新しい知識や情報などは排除した方がいいと考えるんだろう。
だけどそこで考えなきゃいけないのは、そういう人が上司になったときに、成長機会を奪われてしまう部下のことだよ。社会環境が激変しているのに、部下からそういう機会を奪うのは果たして正しいことなんだろうか。