■部分最適化 / 役割認識3
若造 まったく違うよ。外務省の人間は日本の国家主権を守るために筋の通ったことを言っているわけで、それを乗り越える権限は国会議員といえどもない。なぜなら、国会議員の権限は日本の国家主権の元で法律で認められていることなんだから。そもそも外交は立法府じゃなくて政府の仕事でしょう。国会議員はそれをチェックする仕事であって、リードする役目じゃない。
鈴木宗男は、「地元に対する利益誘導が自分の仕事だ」と考えていたが、それは憲法15条に書いてある「公務員は全体の利益の代表者であって一部の利益の代表ではない」という精神に違反していることが、大変な問題だと思うんだけど、本人は自分の役割がまったく理解できていない。ましてや外交が何かということもわかっていないと思うね。
おそらく「官僚は国会議員の言うことであれば何でもきかなければならない」と思っていたんだろうね。だけど、国会議員は国の戦略を立てて、それを反映した法律を決める役割であり、官僚は法律で決められた行政執行をするという役割の人なんだ。
おやじ なんだか難しい話だな。そんな難しい話より、「どちらが偉いのか」をはっきりした方が、話が早いじゃないか。
若造 だからあ、どちらが偉いということはないの。国会議員には国会議員の役割があり、官僚には官僚の役割があるということ。三権分立なんだから。
おやじ それじゃ、さっぱり話がわからないじゃないか。オレが聞いてるのは、「どちらが、どちらに従うべきなのか」ということなんだ。偉い人の言うことを聞いておけばまちがいないんだから。
若造 うー、どう言ったらわかってもらえるのかな。旧日本人は、どうしても「相手は自分が命令できる相手か、それとも自分が従うべき相手なのか」というふうにしか対人関係をつくれないんだね。「封建的対人観」だな。
だけど組織にはいろいろな仕事があるんだから、仕事というのは、各々に役割が与えられていて、その総合力で組織は大きな力を発揮するわけでね。チームは、目的を遂行するためにいくつかの役割に分けられていて、だから組織の一員であるわれわれはその役割を、きちんとこなせばいいということなんだ。
組織から割り当てられている仕事、期待されている成果をプロとして達成できれば、それ以上は何もする必要がないということ。つき合い残業をしたり、他の同僚とつるんで、飲みに行って上司の悪口を言ったり、上司に言いたくもないおべんちゃらを言ったり、上司の引っ越しを手伝ったりする必要なんかまったくないわけ。
そして、自分の役割がちゃんとこなせなくなるような圧力を他人から受けた場合には、「困ったことである」と自信を持って主張するべきだと思うね。外務省が国策通りの外交を行っているのなら、そこに鈴木宗男が何か言ってきたからといってそれをはねつけるのは当然だと思うよ。
そういうルールを無視して、大きな声を出して人の仕事に介入し、自分の利益を取ろうとするのが旧日本人的なやり方だよ。