■社外に出ていかない / 外界志向・オープン志向2
おやじ だからオレはリスクは嫌いなんだ。なぜわざわざ進んで危険な道を選ばなければならないんだ。それは青春の特権かもしれないが、われわれいい年の者がやることではない。
若造 リスクとは危険のことじゃないんだよ。予定した結果よりどの程度上振れ下振れするかという振れ幅のことなんだ。そしてそういう考え方をすれば、リスクのコントロールは可能なんだよ。
だからひたすら守りに回るのではなく、自分の心の窓を開いて、新奇なものを受け容れて、それが自分にもたらしてくれる可能性を追求する余裕を持つべきじゃないんだろうか。心の窓を開かないと、変化を前向きに受けとめてチャンスに転じることはできないよ。
おやじ そういうことはベンチャー企業がやればいいんだ、どうして、うちのような会社がそんな危ない橋を渡らなきゃいけないんだ。変化というのは、われわれにとっては脅威でしかない。
そもそもうちの社の場合、席にいる間は労働時間にカウントされるんだから、外に出ていっても仕方がない。
若造 そこまでして、新しいものを受け容れたくないかなあ。困ったもんだな。
でも仕方ないか、考えてみたら旧日本人の価値観は、自分が属している組織の価値尺度だから、そこから離れた、今まで自分が見たことも考えたこともなかった未知のモノと遭遇したときに、自分の組織を貫徹している価値観にうまく位置づけられなかったら受け容れられないわけだから、免疫が身体に入ってきた異分子を撃退するように、否定する以外の反応はないんだろうなー。
おやじ われわれは、今持っているものだけで十分だよ。それでお客さんもに満足してもらえる商品がつくれるんだから。
若造 あのね、今の世の中で起こっていることをちゃんと正面から見据えなきゃ。今起こっているのは、情報力を中心にした社会の秩序の大幅な組み替えなんだよ。価値のある情報をいち早く手にするものが大きな力を持つんだ。そこから目を逸らしちゃダメだよ。今やビジネスというのは情報戦なんだ。ビジネスマンには社内に引きこもっている時間なんかないはずなんだよ。
おやじ だからって、意味もなく会社の外に出て行ってたら、時間のムダになるだけじゃないか?
若造 会社の外に出て、初体面の人と情報を交換して、有益な情報を集めるために必要なのが「ネットワーク能力」なんだよ。基本はコミュニケーション能力と表現力だと思うけど、旧日本人はちゃんとしたビジネスをやってきていないから、まず、相手が何か言っても、その情報の確度や重要度を判断する価値観を持っていない、これが致命的なんだけどね。