■「情報共有」拒否 / 「知」を共有2
おやじ 人間は、自分の本心は決して口にはしないものだ。そう思ってかからないと損するぞ。だからオレは、なるべくあいまいに、自分の方針を人に話さないようにしているんだ。そうすると騙されたり陥れられる心配がないからな。自分の信念や本心は、まちがっても口にしてはならないということだよ。
若造 人間はひとりじゃ何もできないじゃない。だがら誰かとパートナーになるためには、自分が何を考えているかをお互い交換し合う以外にはないじゃないか?
おやじ 会社にいる限り、上司も部下も取引先も仲間内なんだから、そんなことをする必要がないじゃないか?
若造 あきれるよね。それじゃやっぱり、われわれと旧日本人の間でまともな会話が成り立たないはずだ。
結局部下が情報に触れないようにしておいて、自分だけが必要な情報を独占しておけば、判断を下せるのは自分だけになるから、それが自分の地位を守ることになる。どんな場合でも上司の判断が通るように優位性を確保しているとしか思えないんだけど。
おやじ 経験がない者がいろんなことを聞き込んでも、判断は難しいだろう。何でも上司に集めておけばまちがいないんだよ。
「若い奴がチョロチョロするんじゃない、黙っていろ」ということだ。
若造、はいはい、わかりましたよ。
「では、待っていれば上司がきちんとした指示をしてくれるのかな?」と思っていると、これがまた最低限の指示だけで、「何をどのようにすればいいのか」さっぱり教えてくれないんだよな。最初は「意地悪でそうしているのか、それとも無能だからなのか」と思って観察していたんだけど、どうやら無能は無能らしいんだが、同時に表現力がさっぱり未熟でうまく説明できないんだということがわかってきたね。
上司は長い間会社にいて、上からの指示を一方通行で聞かされて、批判は許されなかったから判断力がだんだん失われてきているんだ。だから基本的に部下のアイデアの良し悪しを判断できないし、表現力も文章力もないので、何を言いたいのかさっぱりわからない。つまり何のために上司がいるのかまったくわからないという状況に陥っている。これではわれわれ部下は、お手上げだよ。
顧客に対しても、今まででき上がったルートだけで商売をしていたから、プレゼンテーションの能力がさっぱりない。そういう部分も旧日本人は、われわれ若手におんぶにだっこで、ぶら下がっているというのが現状だね。