■組織学習軽視 / 組織学習を実践2
おやじ 新しいルールは、組織の中に浸透するまでに時間がかかるから、ゆっくりやらなければならないんだよ。急いては事をし損じる。短兵急というのは最低だからな。
若造 拙速と、組織学習のシステムをつくることとは、全然別の問題じゃないか。今のままで問題がないんだったら、「知」を生み出す必要はないんだよ。だけども「会社を効率的に変える必要がある」と思うんだったら、組織力を使って「知」をつくる工夫をしなきゃいけないよね。
制度化して伝えていく必要があるのに、旧日本人の感覚ではマニュアルをつくる必要性すらわかっていない。「仕事のスキルというのは口伝授受するものだ」と思ってるんじゃないんだろうか。われわれは江戸時代の職人なんでしょうか?
おやじ ふーん。どうやったら、組織的に「知」をつくることができるんだ?
若造 まず今目の前にあるものを否定して考えること。「果たしてこれでいいのか?」と疑問を持つことからすべてが始まるんだよ。また驚くこと。驚きはそれまでの自分を否定することだからね。
そして物事を観察し、データを集め、「これが正しいのではないのか」という仮説をつくって経験的に検証する。その過程で得られた「やっぱりそうなんだ」という気づきを持ち寄って、大きな「知」にすればいいんだ。それを組織の全員でやれば、あっと言う間に組織全体が賢くなるんだよ。そのためにはみんなで知恵をオープンに出し合って、お互いが批判し合うという態度を持たないとね。
おやじ それはむつかしそうだな。われわれはこれまで、「相手が何を考えているのかわからない状況で、どういうふうに行動すれば一番いいのか」を勉強してきたわけであって、お互いの考えを出し合って「知」をつくるというのは苦手なんだ。
若造 旧日本人たちはコミュニケーションが取り合えないので、「お互いがお互いをバカにし合っている」状況なんだ。だから到底、お互いが仕事中に得た気づきを学び合うなんていう状態にはない。
しかしそれでは、日々大変なロスが発生してしまう。もしその気づきをみんなが共有することができる明示的な「知」にすることができれば、それは会社にとって競争力の源泉となるものすごい財産になるはずなんだけどね。